千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.21 花押は「押印」の要件を満たさない! 最高裁判決

先日、自筆証書遺言に要求される「印」につき、花押はこれにあたらないとする最高裁の判断が示されました。自筆証書遺言を有効になすには、日付及び氏名の記載、そして全文の自書に加えて押印が要求されています。これらが満たされないときはその遺言は無効となってしまうのですが、今回のケースでは、「花押(かおう)」がなされている場合に「押印」の要件を満たすのかが争いになったという訳です。

さて、『そもそも「花押」ってなんだ?』って方も多いんじゃないでしょうか。「花押」はその昔、地位のある者がサインのように用いたもので、署名者本人と他者とを区別するために用いられていたものです。戦国武将が用いていたものが有名ですね。

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日本史が好きな方はご存知かもしれません。かくいう私も日本史好きです(笑)。昔はこれが本人性を表すものとして通用したようですが、現代、少なくとも、「花押が遺言書の「押印」の要件を満たすか」という点については、最高裁により否定されたというわけです。流石に昨今、花押を使っている方はそう多くはないでしょうが、実は遺言書の氏名については必ずしも本名で記載する必要はありません。遺言者を特定できるものであれば足りるとされています。例えば、「タモリ」と書いてあれば「森田一義」さんのことだと一般に判断できますから氏名の記載として有効です。しかし、そこまでの有名人でなければ争いの種となる可能性がありますから、本名で記載するのが安心でしょうね。

遺言は、相続争いを避けたり、遺言者の意思を相続に反映させるためにはとても有効で、使用する場面も非常に多いものですが、一定の方式を満たさないと無効となってしまいます。公正証書遺言であれば公証人や証人も関与しますから、作成の過程で無効とならないようにチェックもかかりますが、自筆証書遺言となるとそうはいきません。1人で作れてしまいますし、そもそも誰にも見られたくないとの考えから自筆証書遺言を選択する方もいますから、何らの法的整合性を検討されていない遺言書が出来上がってしまうこともあります。そうなると遺言者の目的は達せられないこととなってしまいます。遺言書を作成する際には、その内容ばかりでなく、方式にも注意を払ってくださいね!

ちなみに、私が遺言書についてご相談を受けた場合、公正証書遺言をおすすめすることが多いのですが、やはり(公証人や証人含め)誰にも見られたくないという方もいらっしゃいます。そのようなときは自筆証書遺言の作成サポートをおすすめしております。これは、自筆証書遺言が法的整合性を満たすようにサポートすることに加え、どのような内容にすれば遺言者の目的を達することのできる遺言書となるかなど、納得がいく遺言書の完成までを司法書士MY法務事務所がまとめてサポートするものです。その業務内容上、弊所では内容を知ってしまうことにはなりますが、司法書士及びその補助者には守秘義務が課せられておりますので、部外者に漏れることはありませんし、秘密性についてはご安心いただけると思います。遺言書作成をお考えであれば、納得のいく遺言書完成までを完全サポートする司法書士MY法務事務所へご相談くださいね。

司法書士MY法務事務所の遺言書作成のページはこちら☆

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No.20 知的しょうがい者のための福祉型大学「カレッジ」を知ってますか?

知的しょうがい者のための福祉型大学「カレッジ」って知ってます?「なに、それ?」って方が多いんじゃないかと思います。実は私もちょっと前までは知りませんでしたが、とある縁をいただいたことがきっかけとなり、今月、実際に見学させていただきました。その結果…ハード、ソフト両面において想像以上のレベルで運営されていて、このような学校を求めている方はきっと多いはずだと感じましたので、今回はこの「カレッジ」についてのご紹介です。

カレッジは、福岡県鞍手郡鞍手町に本部を置く、「社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会」という法人において運営されています。知的しょうがい者の支援と言えば、一般には就労支援(就労を目指して必要なスキルを身につけるための支援や就職活動の支援など)が知られているところですが、カレッジにおいては、「進学して学ぶ」という点を重視されているため、4年間、自立訓練及び就労移行支援にじっくり取り組めるカリキュラムが用意されています。わかりやすく言えば、多くの健常者が大学へ入学するのと同様に、知的しょうがい者にも教育を受ける機会を持ってもらう仕組みと言えばいいでしょうか。周りが勝手に限界を決めるのではなく、本人の意思を尊重し自主性を重んじることのできるその仕組みは画期的なものだと思いました。希望者は、4年を経過しても引き続き在学することができ、これは大学院にあたるものと考えていただければいいでしょう。

私が訪れたのがお昼前だったこともあり、とあるクラスでは調理実習を行っていました。広くてきれいなキッチンでいきいきと調理する姿はとても楽しそうで、「自ら学ぶ」充実感を感じているように見えました。

キッチンの様子はこんな感じです。

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調理実習で作った料理は昼食として食べるのです。プライバシーに考慮して、満足げに食べる顔をお見せすることができないのは残念ですが、やっぱり一生懸命作った分だけおいしく感じるものですよね。私も学生時代の調理実習を思い出しました。

また、障害の程度が大きめの生徒さんのクラスでは、皆で力を合わせて紙でドラえもんを作ったり。クオリティがすごい!!

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障害の程度の差こそあれ、カレッジ生徒の皆さんは4年間しっかり学ぶことでその学力のみならず、その後の人生を生きていくうえで必要な力を身につけ、入学時より大きく成長されていくとのことです。

鞍手ゆたか福祉会の長谷川正人理事長と、長谷川美栄副理事長です。

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お二人とも知的しょうがい者の支援について熱く語っていただきました。カレッジは今後、全国に広げていくとのこと。冒頭にも書きましたが、ハード、ソフトともに非常に充実していて、おそらく需要は相当に多いものだと思いますし、知的しょうがい者の教育を受ける機会を拡大する大きな流れを作っていかれるものと思います。お話を聞けば聞くほど、その熱意の大きさに敬意を表するとともに、お手伝いができればと感じるのでした。興味を持たれた方、もっと知りたいという方は、下記リンクから社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会さんのホームページをご覧ください。資料請求すれば、詳細な資料も送付してもらえるとのことです。私も今後、情報を発信していきたいと思っています!

社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会│福岡県鞍手郡鞍手町

なお、関連情報記載のページ「障害者差別解消法が施行されます。 ってどんな法律なんだろう?」についてはこちら。同ページにおいては「障害者等支援信託」についてもご案内しています。

myjimusyo.hatenablog.com

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No.19 パチンコ台の釘を曲げた店長が書類送検! 何でそうなるの??

今月初めに、京都府城陽市のパチンコ店運営法人と店長が「パチンコ台の釘を不正に曲げた(広げた)」として、書類送検されました。具体的には抽選入場口に玉が入りやすくなるように広げたそうですが、一般的には「それって日常茶飯事じゃないの?何でそんなことで事件になるの?」って思う方も多いことでしょう。そこで今回は、元パチンコ店店長の経歴を持つ私がこの件を少し掘り下げてみたいと思います。

ちなみに記事は、次のように取り上げています。
『パチンコ台の大当たり抽選入賞口に玉が入りやすくなるようくぎを不正に広げたとして、京都府警生活安全対策課と城陽署は2日、風営法違反(無認可設備変更)の疑いで、京都府城陽市のパチンコ店運営法人と、男性店長(46)を書類送検した。府警によると、店長は容疑を認め、「集客して利益を増やすためにやった」と供述している。

 書類送検容疑は1月19~24日、5回にわたり、府公安委員会の承認を受けず、店内のパチンコ台2台の大当たり抽選入賞口に玉が入りやすくなるよう、くぎを曲げたとしている。

 パチンコ台は、国家公安委員会が指定した試験機関「保安通信協会」の定める出玉率などの基準に合格したものしか設置することができず、無許可でくぎを曲げることも禁止されている。

 府警によると、店長は売り上げが低迷していた平成26年末ごろから、設置している百数十台のパチンコ台の大半で、ハンマーなどで大当たり抽選入賞口上部のくぎを広げるなどし、玉を入りやすくすることで射幸心をあおり集客増を図っていたという。

 今年1月ごろ、業界関係団体で組織する遊技産業不正対策情報機構が府警に申告。府警がパチンコ台を押収して鑑定した結果、不正が発覚した。

 不正に改造されたパチンコ台をめぐっては、昨年11月、ギャンブル性を高める「くぎ曲げ」が横行しているとして、警察庁が業界団体に不正機の撤去を要請している。』

www.sankei.com

で、そもそも一般的な認識としては、「釘は日々、調整してあるのが普通じゃないの?」って感じじゃないでしょうか?こういう道具を使ってカツンコツンと…。

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でもこれ、実は勝手に調整してはいけないんです風営法関連規則において、パチンコ台の釘は「(盤面に対して)おおむね垂直に打ち込まれている」ことが義務付けられています。つまり、「おおむね垂直」ではないものとする釘調整は違法ってこと。しかし、業界の慣例でどこの店舗でも行われてきました。実際、「おおむね垂直」の状態では玉は入賞しにくいし、大当たりしても出玉は少なくなるでしょう。また、客側のニーズとして、ギャンブル性の高い機種が人気が出やすいということもあります。パチンコ店も商売として営業している訳ですから、そのニーズに応えようとするのは当然で、釘調整により出玉を多くしたり、入賞率を調整したりすることとなるのです。この問題については長年、暗黙の了解のような形で見逃されてきたといってもいいでしょう。

 

では、なぜ今回、釘調整を行ったパチンコ店長が書類送検されるという事態になったのか!?

 

これについては…
・釘を曲げることで射幸心を煽ったから
・2015年から、釘曲げについて指導を開始したが従わないから見せしめに
・世間のパチンコ業界に対する風当たりの強さから動かざるを得なかった

なんてことが言われているようですが、正確なところはわかりません。実際には、ほぼ全ての店が釘調整をしているという実態を把握していながらも、今まではお目こぼし的に見逃してきた訳ですから、何故今回だけ?という疑問が生じるのは当然です。ただ、上記で述べたように、元来、釘調整は違法な訳ですから、ついに本来のあるべき姿に戻そうとしてきたと解釈することもできるかもしれません。また、パチンコ業界自体の規模は縮小しているものの、1人当たりの消費額は増大していることから、ギャンブル性の高さに警鐘を促すものとも言えるかもしれません。

実は、業界においてのパチンコ台及びパチスロ台のギャンブル性の高さについては、従来から問題ありとして指摘がなされてきました。そもそも日本では、賭博は原則として違法です。しかし、パチンコについては、刑法第185条但書の「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」にあたるものとして、あくまで「娯楽」の範囲で許されているものです。ゆえに、そのギャンブル性の程度やパチンコ店の運営については、従来より監視の目が向けられてきました。

※参考 刑法条文
(賭博)
第185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

ご存知の方も多いとは思いますが、パチンコ店の運営って「遊技場営業」として風営法の規制を受けています。開店時だけではなく、新台の入れ替えなんてのも実は許可を受けなければいけません。そして設置されるパチンコ台についても保通協(保安通信協会)の基準を満たした物しか置くことはできません。

つまり、新台入替の一般的な流れとしてはこうなります。(ちなみに、許可は公安委員会がなすのですが、その申請の窓口は管轄警察署の生活安全課の許認可係となりますから、地域によって多少の違いはあるかもしれません。)

1.パチンコ台(新機種)を開発したメーカーが保通協の検査を受ける。
2.合格したパチンコ台を購入したいパチンコ店はメーカーと売買契約を交わす。
3.パチンコ店は、新装開店日に間に合うように許可を取得する。
4.新台の営業開始。

もちろん、検査の日だけクリアすればその後はどのように使ってもOKというのでは「ざる」になってしまいますから、

 

許可を受けたパチンコ台は、そのままで使用するべし!勝手に変更してはいかんよ!

 

というのが建前というか、本来のルールなんです。これらのことが、風営法ではどのように定められているのかと言うと、「ぱちんこ屋」は第2条1項7号で「設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる営業」として「風俗営業」にあたるものと定められています。また、営業の許可の基準としては、第4条4項で、「公安委員会は、当該営業に係る営業所に設置される遊技機が著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める基準に該当するものであるときは、当該営業を許可しないことができる。」と定められています。更に、遊技機の増設、交替その他の変更については、第19条10項で準用する第9条1項で「あらかじめ公安委員会の承認を受けなければならない。」とされています。つまり、釘を曲げることは「その他の変更」にあたり、本来、公安委員会の承認を受けなければならないというわけです。

だから、釘を叩いて開けたり閉めたりなんてのは本来、その都度、承認を受けるべきものなんですね。でも実際には承認を受けることなく当たり前に行われています。だって、これをしなかったら、同じ台がずっと出続けたり、逆にひたすら出ない台や回らない台ってのが生じることになっちゃいますから。仮に釘をいじる度に承認申請されるとすると警察としても業務が滞ってしまうという実質的問題も…。そんなわけで、業界の実態としては、警察もそこまでは細かく指導はしてこなかったという経緯があります。だからこそ、今回の事件が業界に驚きをもたらし、今後の取扱いはどうなるのかという点に注目を集めていると言えるでしょう。

釘調整なしでは成り立たないパチンコ台とそれを本来禁止している風営法、相容れないものを今後、どのように成り立たせるのか、元業界人として気になるところではあります。ちなみに、元店長の立場から言わせてもらえば、長期的に見て客の側が勝つということはかなり考えにくいことです。パチンコ、パチスロが趣味だという方はほどほどに遊ぶことをオススメします。まして借金をしてまで…というのはもってのほか。翻って司法書士の立場から言わせてもらえば、ギャンブルによる借金は破産手続において免責不許可事由となりますので、のめり込みにご注意くださいね。それでは、今回はこの辺で。

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No.18 熊本城の一口城主制度 ご存知ですか?

今回の地震で、天守閣の瓦が落ちたり、石垣が崩れたりと震災被害が生じている熊本城。よく知られているように、築城の名手加藤清正が設けた天下の名城です。その熊本城に「一口城主」制度というものがあるってご存知ですか?実は、私も最近知ったのですが、即参加することにしました。今回はその一口城主制度のご紹介です。

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写真は以前、訪れた際に私が撮影したものです。この大小2つの天守閣がかっこいいですよね。

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天守閣最上階からの眺めです。季節と天候によっては吹き抜ける風が気持ちいいのです。

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石垣にもこだわりがあるのです。

実は私、小学生の頃の数年間、熊本市内に住んでいました。当時から歴史好きな私は熊本城に行くのが好きでした。また、数年前までは福岡に住んでいたため、仕事の空き時間や休みの日に訪れていましたから、はっきりとは覚えていませんが10回以上訪れているのは間違いありません。基本的に城好きですから他の城にも行くのですが、やはり熊本城は格別です。かなり広い範囲を散歩できるようになっていますし、当時の使われ方などに思いを巡らせながら散策も楽しいですよ。

…と私のことはいいとして、一口城主ですよね(笑)一口城主は一口1万円以上の寄付をすることでなることができます。そして、この寄付金は熊本城復元整備事業に全額使われることになっています。また、一口城主になると各種特典が受けられるとのことで、その内容は…

①1年間城主として天守閣の芳名板に名前が掲載される。
②記念城主証がもらえる。
③城主手形が発行される。
熊本市が管理する16の施設に無料入園できる。
⑤熊本城内や動物園内の売店で買い物時に5%の割引が受けられる。
⑥10万円以上の寄付で、感謝状がもらえる。
(③の城主手形は④及び⑤の利用時に必要となるようです。)

と盛りだくさん!!城好きならずとも参加したくなりませんか?

一口城主制度の公式案内ページはこちら。募金の方法も説明されています。

イベントカレンダー - 【熊本城公式ホームページ】

PRページも。

www.jalan.net

今回の震災で、何か自分にできることを考えたときに、この制度を知り、思い入れの深い熊本城に…ということで微力ながら私は参加を決めました。同じように何かをしたいと考えている方、こういう制度もありますよってことでご紹介しました。

今回はここまで。司法書士MY法務事務所のホームページはこちら。是非、覗いてみてくださいね☆

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NO.17 熊本の震災で権利証を紛失した場合… 法務省のお知らせを解説します!!

法務省から熊本の震災で権利証を紛失した場合についてのお知らせが出ました。今回はこれについての解説です。家が倒壊してしまった場合もそうでしょうが、腹立たしいことに火事場泥棒も出現しているようで、住人の方が避難所に避難している間に権利証を盗まれてしまうといったこともあるかもしれません。その場合、不動産の所有権を奪われてしまうことになるのか?という話。

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結論としては、権利証(登記識別情報または登記済証)を奪われたからといって不動産の所有権を奪われるというわけではありません。また、権利証を奪われたら所有権移転登記で他人名義に変えられてしまうのかという点についても、それだけで名義を変えられるわけではありません。名義を移転するには所有権の登記名義人の印鑑証明書も必要になるからです。更に言えば、何らかの手段で権利証及び所有権登記名義人の印鑑証明書を入手した者により勝手に他人の名義に変えられたとしても、やはり所有権が移転するものではありません。なぜなら、登記はあくまでも対抗要件だからです。

対抗要件とはその名のとおり、第三者に権利を対抗するための要件であり、この場合、「自分が所有権を持っているぞ。」と法的に主張できるということです。つまり、登記名義人だから所有権を有しているのではなく、所有権を有している者が第三者にその所有権を対抗できるように登記するという関係です

ですから、仮に勝手に名義を移されたような場合でも、真の所有者が裁判上でその所有権を有すること及びその所有権を侵害する登記がなされていることを証明すれば、勝手になされた所有権移転登記の抹消を命じる判決が出ることになります。そしてこの場合、真の所有者はこの判決を使って勝手になされた所有権移転登記を単独で抹消することができます。

そうは言っても、裁判をして抹消登記をするのには費用も体力も使いますからできればこのような事態は避けたいもの。だったら勝手に移転登記なんて出来ないようにしちゃおうってことで、「不正登記防止申出」という制度があります。これは申出から3か月以内に対象不動産に登記申請があった場合、申請があったことを申出者に通知するという制度です。自分は登記申請していないのに、この通知がなされれば、「勝手に登記されようとしている!」と気付くことができるという訳です。

更に、権利証が登記識別情報である場合には、「登記識別情報の失効申出」という制度もあります。これは、登記識別情報が暗証番号的な性格を持つことから、登記識別情報が盗まれたような場合に、その登記識別情報を失効(効力を無くしてしまう。)させる制度です。

いずれにしろ、権利証が登記済証または登記識別情報のどちらであっても再発行はできませんから、紛失や盗難にあった場合にはこれらの制度を利用して意図せぬ登記がなされるのを防ぐことが大切です。お困りの方は、早めに法務局または司法書士にご相談ください。

司法書士MY法務事務所の不動産登記のページはこちら。お役立ち情報を随時更新中!!是非、覗いてみてください☆

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No.16 Windows10を強制的に押付けてくるMicrosoft だが断る!!

しばらく前から、パソコンを使っていると時々出てきていたWindows10の広告。やたらいいもので便利になると煽ったり、「今なら無料でアップグレード」などとお得感をアピールしていたが、どうやら普及具合が今一つなのか、ついに数日前から次のような画面が表示されるようになり、「お勧めしています」なんて言いながらも、実際には無理やりユーザーのパソコンにWindows10を潜り込ませようとしているようです。いきなり画面に現れてビックリした方も多いんじゃないでしょうか。「予定の変更」をしても数日先に延ばせるだけで、結局Windows10にされてしまうのか?受け入れざるを得ないのか?と思わせるような表示になっています。

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きっと、多くの方が同じことを考えてると思うんですが、この手のアップグレードって早く乗っかることでデメリットこそあれ、メリットなんてないのが大抵なんですよね。不具合が起こる可能性は高いし、使い慣れたOSから変えたくない。更にパソコンを仕事で使っている場合は安定性が大切なのでちゃんと動くかどうか怪しいものを使いたくないっていう…。Microsoft側としては、早く移行させたいんでしょうが、ユーザー側としては移行したくない人が大勢いる訳です。「だが断る」なのです(笑)

ちなみに、司法書士業界で言うと、オンライン申請に使う「申請用総合ソフト」や、パソコンの画面上で登記記録を確認できる「登記情報提供サービス」も、最近ようやく対応したものの、少し前までは対応していませんでした。つまり、早い内にWindows10に移行した場合、業務に差し支えが出ちゃってたんです。まぁOSの変更を受けてソフトも対応してる訳だから順序的にはしょうがないんですが…。

とにかく、そんなわけで、できるだけWindows10への移行は避けたいってこと。おそらく、他の業種の方も似たような理由で移行を避けたいって方が多いのでしょう。その方法をネット上で探した人は多いようで、Windows10へのアップグレードを避ける方法を公開した方のページがかなり拡散されているようです。私も参考にして、とりあえず今回のピンチを脱しました。以下にリンクを張っておきますので、困っている方がいたらどうぞ。

gunma-web.com

それにしても、MicrosoftにしろApple(私はitunesも嫌いなのです)にしろ、こういう押付けがましいところはどうも好きになれない。ユーザーが好きで使っている商品があるのに、自分達の価値観で「こっちの方が便利だよ(実際はそうでもないし、ちょくちょく欠陥もある)。」と言って押付けてくる。しまいには、要らないものを無理やり使わせようとしてくるなんて有り得ない。ユーザーのためにOSがあるのか、OSのためにユーザーがいるのかってなもんです。誰か!!国産で細やかな気遣いのある使い勝手のいいOS、創ってくださーい(笑)

Windows7でいけるとこまでいこうと奮闘中!そして、押し付けではない法務サービスを提供中(笑)。司法書士MY法務事務所のホームページはこちらです。よかったら覗いてみてくださいね。

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No.15 東京司法書士政治連盟主催の空き家問題に関する研修(講師 上田真一氏)に参加しました。

先日、行われた東京司法書士政治連盟主催の研修、「空き家問題の現状とその対策」に参加してきました。メディアにも露出のある上田真一氏(NPO法人空家・空地管理センター代表理事)が講師ということで、法律家である自分とは違った角度からの空き家問題に関する捉え方が聞けるのではないかと考えたのですが、結果としては、かなり近い視点から空き家問題を見ているのではないかなという印象を受けました。

ちなみにNPO法人空家・空地管理センターホームページ内、上田真一氏の紹介ページはこちら。とても気さくな方で、ありのままの空き家問題を語っていただき、有意義な研修でした。

www.akiya-akichi.or.jp

冒頭にも書いたとおり、今回の研修参加前は、上田氏は自分とは異なる視点から空き家問題を見ているのではないかという予想をしていたのですが、研修を終えると、実際にはかなり近い視点で捉えているのではないかと感じました。特に、

・空き家問題というのは放置していてもリスクを負うばかりで所有者にとって得なことは非常に少ない。にも関わらず、目先の費用がかかることや法的問題があることで面倒だから放置している人が多い。

という点を空き家が増加する原因の大きなものと考えているところは、共通認識だと感じました。何らかの動機付けがなされなければ、費用や手間をかけてまで問題の解決の為の行動に向けては動き出さないといったところでしょうか。つまり、法的に云々言っても、費用や手間をかけるだけのメリットがなければ所有者の方も動かないのが現実なのです。

じゃあそのメリットを産む方法って…結構色々あるんです。例えば…

①使用する予定がないのであれば、売却して現金化する。
現金化して有効に使うというのがまず考えられます。仮に相続手続きが終わっていないという場合であれば、現金化して相続人間で分けることとすれば公平に分けやすくなります。遠方にあるため、売却手続きが面倒だという場合には、売却代理の形を採るのも有効です。

②賃貸物件として活用する。
もし、物件が古くなってしまっていれば、リフォームしたうえで賃貸するようにすれば眠っていた資産を活用することができます。もし、賃貸した後の賃借人とのトラブルが不安だというのであれば、定期建物賃貸借(契約更新がないことを前提とする賃貸借契約)を利用するなど、対策をしておけばよいのです。

③活用を業とする業者に任せる。
賃貸物件として活用するとしても運営が面倒だとか、空き家とは離れた地域で暮らしているため、賃貸管理ができないという場合であれば、不動産の活用を業とする業者(不動産信託会社)などに任せるのもありです。賃貸以外の活用方法も検討してくれます。ただし、「物件の価格が〇〇円以上が対象」といった条件が付いている場合があるので、事前に検討が必要です。小規模な活用では、借り上げ制度を利用した賃貸経営というのも考えられます。借り上げ制度を利用すれば、賃借人が入らないなどの不安は解消されます。ただし、直接賃貸する場合よりは収入は少なくなる欠点はあります。

他にも活用の方法はあるでしょうが、結局のところ、行動すれば眠っている資産が利益を産みだす宝になるってことなんです。そして、更に恐ろしいのが…

 

空き家を放置するデメリットは想像以上に大きい!!

 

ってこと。代表的なものだけでも次のようなものがあります。

①空き家に適切な管理を施していなければ、所有者は多額の賠償責任を負う場合があります。
民法第717条1項では、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とされています。つまり、「空き家の安全性をしっかり保たなければ、他人に損害が生じたときに空き家所有者は賠償しなければならない。」ということです。(ちなみに条文に出てくる「占有者」は空き家の場合、存在しないのが通常です。)具体的な事例で言うと、空家の外壁材が剥がれて飛散し、通行中の小学生に当たって死亡させたという事例では、賠償金は5,630万円と試算されています。放置された空き家が倒壊し隣家に倒れかかったため、隣家も崩れ居住者を死亡させたという事例では、2億円超の賠償金が試算されています。ちなみにこの所有者の責任は無過失責任(過失が無くても責任を負う。)であり、非常に重いものとなっています。

②火災等含め、様々な近隣被害が生じる。
空き家は人目につきにくく、庭にゴミが捨てられたりすることも多いことから、放火のターゲットとして狙われやすくなります。また、放置された庭木が隣家に向かって伸びていくことも多く、ご近所トラブルの種になります。更に、捨てられたゴミが悪臭を放ち、近隣から苦情が寄せられることにもなります。このような事態を放置していれば、我慢できなくなった近隣住民から訴訟を起こされることもありますし、その結果、多額の賠償金の支払いを余儀なくされることにもなります。

③空き家の不動産価値や換価可能性が低下する。
空き家を放置すれば、当然ながら建物は傷み(建物は、誰も住まず放置している状態でもどんどん傷んでいきますよ。)、庭の草木は生い茂ることになります。そうなれば、不動産としての価値は低下しますから、その売却価格は安くなってしまいます。放置することで、日々、資産を失っていると言えるでしょう。ちなみに、近隣に問題となるような放置空き家があると、その近隣の物件の資産価値にも影響が出ますから当然、ご近所さんにも嫌がられます。

このように、空き家放置のデメリット、めちゃくちゃ大きいんです。なのに未だに放置している所有者の方が多いのは何故か?実は、アンケートからも判明していることですが、空き家問題が解決しない原因の大きなものとして、「特に大きな問題と考えていない。」というのがあるんです。つまり、「いつかは何とかしないとな。」なんて思いつつもそのまま放置…。これが多いんです。

 

空き家は放置していれば現状維持…ではありません。日々、マイナスとリスクが増加していますよ!!

 

ということは、ここまで読んでいただいた方ならご理解いただけると思います。転じて言えば、

 

ここで行動を起こせば、マイナスとリスクが無くなり、プラスが生じますよ!!

 

ということも、ご理解いただけると思うのです。詳細な活用方法まで考えるのは難しくても、専門家に相談するだけなら簡単だし、そこで受けた提案を聞いて選択するというのであれば、「面倒」というハードルは下がってきます。空き家所有者の方、これから所有者となられる可能性がある方、一度、検討してみることをおすすめします。

 

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上田氏が空き家問題に関して出版した書籍です。研修中に目次を見るくらいの時間があったので、目を通して即、購入することにしました。他の専門家はどのような事例に直面しているのか、興味もありますし視野を広げる意味でも…。読み終わったら感想でも述べようかな…なんて。

司法書士MY法務事務所の「空き家対策(空き家問題)」のページはこちら。空き家について興味が湧いたら是非、覗いてみてください。なお、空き家に関するご相談・お悩みは随時無料にて承っております。お気軽にお問合わせください☆

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