No.29 判例変更! 預貯金は遺産分割の対象となります
随分と寒くなってきましたね。年の瀬ということで皆さんお忙しく過ごされているのではないでしょうか。さて、今回はタイトルのとおり、平成28年12月19日、最高裁大法廷において、「預貯金は遺産分割の対象となる」との判断が示されたことについて。従来、「預貯金は遺産分割の対象外」とされてきた訳ですが、この点、判例変更されたということで、その内容や影響について触れてみたいと思います。
従来、相続の場面において、「金銭その他の可分債権については、遺産分割を経ずに、相続開始によって当然に各共同相続人にその相続分に応じて承継される」として扱われてきました。分割債権説とも言われる考え方ですね。
これが今回の判例変更で、預貯金についても、「預金者の死亡により口座の契約上の地位は相続人全員で共有されており、法定相続割合では当然には分割されない」、「預貯金は遺産分割の対象となる」とされたという訳です。
どういうことなのか?
例えば、遺産が自宅不動産と預貯金2,000万円だったとしましょう。遺言はなく、相続人は故人の子であるA及びBの2名だったとします。この場合に、自宅不動産はA及びBによる共有状態となり遺産分割の対象となるが、預貯金については遺産分割を経るまでもなく、相続開始と同時にA及びBがそれぞれ1,000万円ずつ取得すると考えるのが従来だったのです。
しかし、この考え方、次のような場面では問題が生じます。
遺産が預貯金2,000万円のみで遺言はなく、相続人は故人の子であるA及びBの2名とします。そして故人の生前にAのみが1,000万円の贈与を受けていたような場合、従来の考え方によると、遺産である預貯金2,000万円をA及びBが1,000万円ずつ取得することになりますが、その結果、Aは故人から計2,000万円、Bは計1,000万円を受取ることになってしまい不公平が生じてしまうのです。
この点については、「預貯金を遺産分割の対象外とすると公平な分配ができない」と、しばしば指摘されてきました。大法廷も「公平な遺産分割のためには、できる限り幅広い財産を対象とすることが望ましい」と指摘し、この度の判例変更に至ったという訳です。
よって今後は、不動産等と同様に、預貯金についても遺産分割の対象になることとなります。既に済んだ遺産分割に適用はされませんが、今後行われる遺産分割には適用されます。
ただし、ここで述べておきたいのは、従前から、相続人全員の合意により預貯金も遺産分割の対象とすることはできていたということ。(実際に弊所で相続手続をさせていただいた事案でもそうしていることがほとんどです。)円満に遺産分割が合意に至った場合はもちろん、争いがあり家庭裁判所に持ち込まれた場合でも、相続人全員の合意を得て預貯金も遺産分割の対象としてきたという経緯がありますから、現に係争中というケースはともかく、直接的に大きな影響を受ける方はそう多くないかもしれません。
気をつけなければいけない点としては、金融機関での預金の取扱いではないでしょうか。従来は、各相続人が自らの相続分にあたる部分については預金の払戻しを請求することができました。(とは言っても、金融機関が相続争いに巻き込まれるのを防ぐため、相続人全員の合意がないと払戻さないなど、各機関により独自のルールを設けているため、必ずしもすぐに払戻されるとは言えませんでしたが…。)しかし今後は、遺産分割終了までは払戻さないという取扱いをする金融機関が増えるものと予想されます。
なお、このような取扱いがされることによって、故人名義の口座から生活資金を支出していた配偶者等は、当面の生活費や葬儀費用に充てる金銭の払戻しができなくなってしまう事態が懸念されるため、現在、法制審議会において何らかの対策を検討しているようです。
今回の判例変更は実務上、既に主流となっている方法に沿うものであり、支持できるものですが、これにより当面の生活費に困る人が生じないように、関係各所には具体的な運用にも気を配ってほしいですね。
それでは今回はここまで☆
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No.28 相続の承認や放棄に関する熟慮期間の伸長と準確定申告期限との関係
久々の更新になりますが、今回はタイトルどおり、熟慮期間と準確定申告期限の関係性についての話題です。熟慮期間は家庭裁判所に請求することで伸長することができますが、その場合の準確定申告(納税者が年の中途で死亡した場合の確定申告)の期限はどのように取扱われるのか、という点を中心にご案内していきます。
まず、「熟慮期間」については次の条文をご覧ください。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 (省略)
相続が開始すると相続人は、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択することになります。選択するうえで、相続財産の内容や、他の相続人が何名いるのかなどの重要な点を考慮することになりますから、その調査をして判断をするための時間的余裕を相続人に与える趣旨で設けられているのが「熟慮期間」であり、原則として、自己のために相続があったことを知ってから3か月間となります。
※熟慮期間についての詳細は、下記リンク先の弊所H.P内「相続関連業務Q&A」よりご覧いただけます。
続いて、「準確定申告」ですが、まず、所得税については毎年所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をすることになっているのは周知のとおりです。しかし、年の中途で死亡した人については、相続人が1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。
相続人が複数名いる場合には連署にて準確定申告書を提出することになりますが、他の相続人の氏名を付記して各相続人が別々に提出することもできます。この場合、申告書を提出した相続人は、他の相続人に申告した内容を通知しなければなりません。また、提出先は被相続人(死亡者)の住所地の税務署です。相続人の住所地ではありません。
さて、ここまでが前提となる知識で、ここからはもう少し進んだお話です。熟慮期間については、上記の条文中に「ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」というただし書きがありますよね。財産の種類や量が多い場合や、被相続人が会社経営者であったため会社の借入金を連帯保証していて債務の調査を要する場合など、相続財産の確定に時間がかかるケースでは、この規定が生きてきます。「とても3か月では間に合わないな。」なんてときは、早目に申立てるのが賢明です。また、複数回の伸長も可能ですから、3か月伸長された後に、やはり間に合わないということで、更に伸長の申立てをすることもできます。
ちなみに申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。きちんと書類等を揃えて申立てれば、基本的には認められると考えて良いでしょう。
ただし、気をつけなければいけないのが準確定申告期限との関係。上記のとおり、準確定申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内ですから、熟慮期間の伸長がなされた場合には熟慮期間満了より先に準確定申告期限が到来することになります。ついつい、「裁判所が伸長を認めているのだから、準確定申告の期限も熟慮期間満了までは先送りされている」と考えてしまいそうですが
家庭裁判所が熟慮期間の伸長を認めたからといって、準確定申告期限も併せて先送りとなるわけではありません。
この点は切り離して考えなければいけませんから、くれぐれもご注意ください。つまり、未だ熟慮期間中であるにも関わらず、準確定申告は先に行わなければならないこととなります。これを怠ると、無申告加算税や延滞税を課されることになってしまいますよ。
また、上記のとおり、熟慮期間の伸長を複数回することも可能ですから、場合によっては熟慮期間中に相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)が到来することもありますが、この場合も準確定申告期限と同様に先送りにはなりませんから、やはり注意が必要です。
弊所でご相談やご依頼を受けている場合には、これらの点もご案内はしておりますが、ご自身で熟慮期間の伸長をされている場合には、準確定申告も忘れずになさってくださいね。
久々の更新でしたが今回はここまで。相続に関する情報にご興味がある方は是非、司法書士MY法務事務所H.P内「相続関連業務」のページをご覧くださいね☆
No.27 不動産を財産分与した場合にも譲渡所得税が課税されます!
先日、三船美佳さんが元夫の高橋ジョージさんに対して財産分与の申立てを行ったとの報道がありましたよね。自宅は3億円の豪邸と言われ、今はジョージさんが1人で住んでいるとのことですが、そんなに大きい家に1人って…。持て余しちゃうのでは…。と思うのです。それはさておき、この報道を知って今回のお題の件をお伝えすることにしました。
夫婦が離婚するときに問題となるのが財産分与。ご存知のとおり、夫婦が婚姻生活中に築いた財産を離婚に際して分けることを言います。離婚成立後にも請求は可能ですが、離婚から2年内に請求することが必要です。ちなみにこの「2年」は消滅時効ではなく、除斥期間と考えられていますので、消滅時効のように中断や停止が生じないのが原則です。この点については、詳細を検討すると難しい話になってしまうので、「財産分与は離婚から2年内に請求しないといけないんだ。」と考えておけば良いかと思います。
実際の財産分与の現場では、自宅を財産分与として引渡すことはよくあります。高橋&三船元夫妻のように豪邸でなくとも、多くの場合、自宅不動産は最も高価な財産ですからね。
さて、そこで問題となるのが譲渡所得税です。譲渡所得税は資産を譲渡したときに得る所得に対して課税され、土地建物の譲渡もその対象となります。譲渡の際に所得を得た者に課税されるため、譲渡した側に課税されることになります。
えっ、財産分与で不動産を譲渡したときって利益を得てるわけじゃないし、譲渡所得税はかからないんじゃないの!?
って考えてしまいそうなんですが、実は、この点については判例が出ていて、財産分与による不動産の譲渡も譲渡所得税の対象となるんです(+o+)
不動産により年々生じた利益そのものを所得として捉え、所有者の支配から外れたときにそれが実現したものとし、清算、課税しているということです。少しややこしい話ですが、財産分与を考える際には、この点にも気をはらうことが必要だと言うことですね。
ちなみに、居住用の不動産を譲渡した場合、一定の要件を満たせば、3,000万円の特別控除(譲渡益から3,000万円が控除される。)や、軽減税率の特例(長期譲渡所得の税額計算時に通常より低い税率で計算できる。)が使えますが、配偶者や親族などの特別の関係にある相手に対して譲渡するケースではこの要件を満たさなくなる点が気になるところです。
しかし、この点については、居住用財産の譲渡者から婚姻に伴う財産分与として受ける財産によって生計を維持している者は、前記の特別の関係にある相手には該当しないと考えられています。そこで、戸籍から除籍するより以前に譲渡をしていても、その後すぐに除籍しているなど、離婚による財産分与としての譲渡だと認められれば、特例の適用を受けられるとして運用されています。その他のいくつかの適用要件を満たすか否かという問題もありますから、事前に専門家に相談するのが良いでしょうね。
高橋&三船元夫妻の場合、それぞれが月に40万円ずつローンを支払っているとか、土地購入及び新居建設時に三船美佳さんの母が資金援助しているとの報道もあるので、少し複雑にはなるでしょうが、財産分与として引渡す際には、やはり譲渡所得税の検討はすることになるでしょう。
一時はおしどり夫婦と言われていましたが、「何でもないようなことが……」ってやつですかね。
それでは今回はここまで。司法書士MY法務事務所の離婚・家庭問題のページはこちらからどうぞ。
No.26 オペラハウスが改修工事、2017年着工予定
皆さん、お盆をいかがお過ごしですか?海外旅行中という方もいるのではないでしょうか。今回はオーストラリア、シドニーの観光名所オペラハウスについての話。私もシドニーに住んでいた頃は散歩がてらよく行ったものです。そのオペラハウス、来年から2020年まで改修工事を行うようです。そこで今回は普段、あまり報道されない角度からのオペラハウスの写真も掲載してご紹介しようと思います。法律の話は一切出てきませんが、息抜きがてらどうぞ(^_-)
ちなみにオペラハウスって1973年に開館したそうで、今回が最大規模の回収とのこと。す。何と改修費は156億を超えるそうです!ただ、大規模と言っても外観が大きく変わることはなさそうなので、個人的にはまぁ良かったかなと。音響効果を高めたり、使用していないオフィス部分を家族向け学習センターにするといったことが行われるようです。
やはり、この ↓ デザインはキープしてほしいものです。写真等で見るときは、この角度からが多くないですか?
あとたまにこんなのとか ↓
特徴的なデザインがわかりやすいし、かっこよく見えるっていうのもありますしね。じゃあ普段あまり見ることのない角度からの写真いってみましょう。まずは、上の写真のちょうど逆側から撮ったもの。
左側に少し角度をずらすと…
もう1つのシドニーの名所、ハーバーブリッジがあるのです。そしてこの階段を上がっていくと…
館内に入る入口へと続いている訳です。これだけ近くまで寄ってくると、表面の模様が目を引きます。私は実際に行ってみるまで、表面はつるつるだと思ってました(笑)もっと寄ってみると…
こんな感じ。しっかり模様が入ってます。最初これを見たとき…
これを思い出しました。そう、プラモデルの墨入れ(プラモデルのリアリティを増すための作業)です(゜゜) オペラハウスには一切関係ない話ですが…(汗)
2つ上の写真にとがった屋根(奥のものも含めると)が3つ写ってますが、右2つの間に入っていくと…
こんな感じになっています。この角度はレアですよ。行かないとなかなか見ることがないのでは?まぁ、単にどこにいるのかわかりにくいから撮る人が少ないのではというご意見はあるでしょうが(笑)
「なぜ、これを撮った?」と言われそうなので、最後にちょっといい写真を載せておきます。
夕暮れのハーバーブリッジです。手前に大勢の人がいるのが写ってますが、ここは野外レストランになっていて、酒と食事を楽しめるようになっています。お値段はそこそこしますけどね(笑)オシャレスポットですよ☆機会があれば是非どうぞ。
それでは今回はここまで。お盆休みを楽しんでください。お盆休みがない方は…仲間です(笑)熱中症にならないように頑張りましょう!
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No.25 生前退位に強いご意向 天皇陛下のビデオメッセージを拝見して…。
本日、天皇陛下がビデオメッセージにより、お気持ちを表明されました。報道もされているように、「生前退位」に強いご意向をお持ちのようですね。このお気持ち表明により、一気に議論が加速するのではないでしょうか。今回はこの件について、少し述べたいと思います。
まずは、陛下のお言葉を次に記載します。
「戦後七十年という大きな節目を過ぎ、二年後には、平成三十年を迎えます。
私も八十を越え、体力の面などから様々な制約を覚えることもあり、ここ数年、天皇としての自らの歩みを振り返るとともに、この先の自分の在り方や務めにつき、思いを致すようになりました。
本日は、社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら、私が個人として、これまでに考えて来たことを話したいと思います。
即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました。伝統の継承者として、これを守り続ける責任に深く思いを致し、更に日々新たになる日本と世界の中にあって、日本の皇室が、いかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っています。
そのような中、何年か前のことになりますが、二度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました。既に八十を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています。
私が天皇の位についてから、ほぼ二十八年、この間(かん)私は、我が国における多くの喜びの時、また悲しみの時を、人々と共に過ごして来ました。私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。天皇が象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めると共に、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました。皇太子の時代も含め、これまで私が皇后と共に行(おこな)って来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井(しせい)の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした。
天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます。また、天皇が未成年であったり、重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には、天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。しかし、この場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。
天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ二ヶ月にわたって続き、その後喪儀(そうぎ)に関連する行事が、一年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。
始めにも述べましたように、憲法の下(もと)、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。
国民の理解を得られることを、切に願っています。」
さて、そもそも、皇室典範には次のような規定があります。
皇室典範 第4条(即位)
天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。
皇位継承が生じる場面を、「天皇が崩じたとき」に限定しているため、陛下が生前退位を望んでいたとしても、現状のままでは実現しないということです。皇室典範の改正が必要だということですね。皇室典範も法律の1体系と考えられていますから、通常の法改正と同様に、国会で決議を経れば改正することは可能です。
ただし、現在の日本国憲法では、「天皇は、国政に関する権能を有しない(4条抜粋)」とされていることから、陛下自ら、「私は生前退位したいから皇室典範を改正してくれ。」と注文するようなことはできません。そこで、今回のお気持ち表明という形を採られたのでしょう。このような形をとってまで、お気持ちを述べられたのは、やはり生前退位に強いご意向を持たれているのだと思います。
生前退位を認めるか否かという点については、賛否両論あるようですが、私は認めて良いのではないかと考えています。古来には、武力や権力を背景に皇太子を担ぎ出して当時の天皇に強引に譲位を迫るといった例も少なからずあったようですが、現在の天皇には、前述のとおり国政に関する権能はありません。ゆえに、仮にこの先の天皇が譲位したいという意向を示された場合、それが天皇ご自身の意向を無視したものとなることはあまり考えにくいのではないでしょうか。また、譲位を政治的に利用するということも無いとは言い切れませんが、仮にあったとしても、国政に関する権能が無い以上、政治に関しての影響はそう大きくはないのではないかと思います。
何より、そのような小難しい理屈を抜きに考えても、天皇陛下とはいえ1人の人間だということを鑑みれば、高齢からくる体調の不安を理由に譲位したいとの想いは認められるべきでしょうし、上記の事由が陛下の気持ちを抑えつけるほどの説得力を持つとは思えません。
「一般人と一緒にするな!」とお叱りを受けそうですが1点述べさせてもらうと、私は職業柄、高齢者の方のご相談を受けることも多くあります。最近流行りの言葉で言えば、「終活」についてのご相談を受けることも…。やはり皆さん、自分の老後や残りの人生についてそれぞれに願望もあれば心配もあります。自らが亡くなった後の相続のことや家族のことが気になるのです。天皇陛下といえど、この点は変わらないのではないでしょうか。むしろ、立場がある分だけ、考えなければならないことは多く、陛下の「終活」ともなればやるべきことは多岐にわたります。今後の公務のことやご家族のことを思えば、自ら体力が残っている内に譲位したいというお気持ちになられたのもわかる気がします。
一般人には定年退職がありますし、例えば自営業であっても辞めたくなったら辞める自由はあります。職業選択の自由が制限される天皇という立場にあるとは言え、陛下は既に82歳。一般人でも仕事をされている方はそう多くはない年齢ではないでしょうか。現在、陛下には3日に1回の割合で予定が入っている状況とのことですが、もう充分、国のために尽力されてこられたと思います。ご希望どおり天皇を「退職」し、残りの人生をゆっくりお過ごしいただきたいものです。
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No.24 来たる10月1日から「株主リスト」が登記申請時の添付書面になります。
来たる平成28年10月1日から、商業・法人登記の申請の際に「株主リスト」が添付書面になるというお知らせです。改正の理由としては、商業登記の真実性の担保及び法人の透明性の確保が目的と言われています。とはいえ実務上、登記を司法書士に依頼している場合には、その司法書士がお知らせするでしょうから申請の際に付け忘れるということはあまりないのでしょうが、依頼せずに法務部等の担当部署で申請しているような場合にはご注意ください。
今回の改正は、株式会社、投資法人及び特定目的会社が対象となりますが、実務上、やはりこの中では株式会社のケースが多いでしょうから、それを前提にご案内します。
まず、どんなときに、この「株主リスト」の添付が必要となるのかというと、登記すべき事項につき、
1.株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合
2.株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合
の、いずれかにあたるときです。
あくまで登記申請の際に必要となるものであって、株主総会議事録の附属書類になる訳ではありません。つまり、例えば株主総会決議によって取締役の報酬を決定したとか、事業年度の変更をしただけの場合には、株主リストを作成することは不要だということです。
ちなみに、株主総会の決議がいわゆる書面決議(会社法第319条1項)であっても、議事録は作成することになりますが、この場合も登記申請の際には株主リストの添付を要します。
さて、それでは「株主リスト」には何を記載すればよいのか?要件は、上記の1または2のどちらにあたるかによって違います。
①上記1の株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合には、株主全員について次のⅰ~ⅳを記載することを要します。
ⅰ 株主の氏名または名称
ⅱ 住所
ⅲ 株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)
ⅳ 議決権数
②上記2の株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合には、株主数ベースで次のいずれか少ない方につき、ⅰ~ⅴを記載することを要します。
・議決権数で上位10名の株主
・議決権割合が2/3に達するまでの株主
ⅰ 株主の氏名または名称
ⅱ 住所
ⅲ 株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)
ⅳ 議決権数
ⅴ 議決権数割合
株主総会の決議の他に、種類株主総会の決議が必要となる場合には、両方の決議についての株主リストが必要となりますからご注意ください。例えば、A種類株式とB種類株式を発行している種類株式発行会社において、A種類株式のみに取得条項を付すという場合には、株主総会での特別決議の他にA種類株主全員の同意が必要となりますが、この種類株式の変更登記を申請する際には、
・上記②の要件を満たす株主リスト
・A種類株主全員についての①の株主リスト
が共に添付書面となるということです。
なお、株主リストは会社の代表者が証明する形をとるため、商号及び代表取締役の氏名を記したうえで、法務局届出印(会社実印)の押印を要します。
株主リストの書式例は、法務省のホームページからダウンロードすることができます(下記リンクよりどうぞ)。
最後に1点、冒頭にも書きましたが、施行は平成28年10月1日とされています。これは、この日以降に登記申請をする際には、上記改正が適用される(株主リストの添付が必要となるケースが生じる)ということです。対象となる株主総会が施行日前に行われた場合でも、登記申請が施行日以降であれば株主リストの添付を要することになりますので、ご注意くださいね。
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