千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.35 ブラック企業に入ってしまったら…。とっておきの作戦がある!!

皆さんこんにちは。本日のテーマは、「ブラック企業に入ってしまったとき、どうすれば良いのか…。」です。求人情報や面接の段階で、「この会社は残業はあるのか、あるとすれば残業代はちゃんと出るのか。」、「求人情報には週休2日」と書いてあるけど、本当に休めるのか。」なんてことを考えることってありますよね。だけど、「書いてあるんだから、そうなんだろう。」って素直に受け取れないなんてことも…。なぜなら…

 

求人情報に書いてあることや面接のときに聞いた情報と、実際の勤務形態や待遇が違うなんてことはざらにあるから!! 

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もちろん、こんなことがまかり通っていてはいけないのですが、現実には横行しています。その結果、「こんなはずじゃなかった。」、「とんでもない会社に入ってしまった。」と後悔する羽目になってしまう。そんなご相談をよく受けます。

けど、実際には入社してみないとわからないことってたくさんありますからね。そして入社後に、「しまった!!」と思ってもこのご時勢、「やっと見つかった仕事だからすぐ辞める訳にも…。」とか、「その内慣れれば何とかなるんじゃないか…。」なんて我慢するということも…。

でもどうでしょう。毎日のように長時間労働が続く企業、休みがとれない企業、サービス残業が当たり前の企業、パワハラがある企業などなど…。それらブラック企業の経営陣が自ら進んで、「よしっ!うちの会社はこれから残業を減らすぞ」とか、「サービス残業はいけないな。これからは働いた分の残業代を支給するぞ!」なんてことになると思いますか?

 

ならないっ!!残念ながら、そうはならないっ!!

 

まぁ全くないとは言いません。…がそれは何らかの対処せざるを得ない要因(社会的圧力や制裁を恐れて、とか、実際に労働問題が生じたことを契機にしてなど)があるからであって、ブラック企業の経営陣がある日、自ら経営方針をホワイトに転換するなんてことは、ほぼないと言って良いでしょうね。そりゃそうですよね。だって…

 

自らホワイトに転換するという考え方を有している経営者なら、最初からブラックにしないから!!

 

つまり、「いつか変わるかも」なんて我慢してても大抵の場合、それは実を結びません(ブラック企業離職率が高いので、割と早く出世の順番が回ってくることはあっても、積極的にホワイト企業になることはない、という意味で)。

じゃあ入社した後、その勤務先が実はブラック企業だと気付いてしまった場合、どうすれば良いのか。例えば、サービス残業が多いというケースであれば、退社までにしっかり証拠を集めて、残業代を請求するということが考えられます。また、パワハラがあるといったケースであれば、やはり証拠を収集しておいて慰謝料請求するという方法が考えられます。ただし、長時間労働はあるけどきちんと残業代は支給されているというケースでは、解決方法は複雑になるかもしれません。

長時間労働が常態化している職場においては、その原因が経営陣のみならず、労働者側にもあるケースが存在するからです。単に、「仕事量が多い」ということであれば、新たに人を雇うなど、1人あたりの仕事量を減らすことで解決でき、これは経営陣側の問題と言えるでしょう。

しかし、中には残業代目当てであえて帰らない人がいたり、そういう人(とは言っても、「あえて帰らないのではなく、帰りたいのに帰れないポーズ」をとっている)が周囲に多いために、自分だけ帰るのは気が引けるといった雰囲気ができてしまっているケースでは、労働者側でも意識改革をしなければ解決が難しくなります。

具体的には、
・経営者や直接の上司が残業せず、定時に終業、帰宅する。
・残業を減らしている、減らすために努力をする社員を評価する。
・作業の効率性を上げるための手法を全社で共有する。
・仕事の分配を再検討し、適正なものとする。
・有給の取得を奨励、あるいは強制取得とする。
といったことが考えられます。

ただし、今回のテーマとは外れるので、この点については別の機会に譲ることとして本筋に戻り、「入社した後、その勤務先が実はブラック企業だと気付いてしまった場合、どうすれば良いのか」を考えた場合、最も効率的な対策の一つを紹介します。それは…

 

ブラック企業からはさっさと退職すること!!

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※荒木先生、ごめんなさい

 

もちろん、諸々の事情により、ハマるケースとそうではないケースもあるとは思いますが、最近、こんなご相談がありました。

相談者(仮に「Hさん」とします。)がアルバイトとして入社した会社では、労働契約書を交わすでもなく、勤務時間や時給は口頭で説明があっただけ。就業規則データ形式で職場のPCに保存してあるものの、これを見たければ上司にパスワードを聞かねばならない。そして、上司に頼めば渋々見せてはもらえるものの、印刷することは禁止されていて、その理由を聞くと、「就業規則はしょっちゅう変わるから印刷しても意味がないから。」と言われたそうです。

就業規則には労働者への周知義務があるから、いつでも労働者が見られるようにしておかなければならないし、また、労基署への届出義務もあるから、しょっちゅう変わるとしたらしょっちゅう届出ないといけないことになるけど、そんなこと本当にしてるの?そんな会社あり得るの??変わったらそのときに、また新しいものを印刷すれば良いんじゃないの?なんて当然の疑問はさておいて、結局この会社、なぜそのようなことをしているかというと、Hさん含む全アルバイトとの労働条件の内容について、確たる証拠は残さないという状況をあえて作っていました。

更に、Hさんが実際に働いた労働時間についても同様にデータとして管理されていたそうですが、やはり印刷はできない状況にあったとのこと。つまりこの会社、「時給何円で合計何時間働いたか」について、確信的に、後に争いとなった際の客観的資料を残さないようにしていたという訳です(Hさんは自身で毎日の労働時間についてはメモを残していたのですが、これだけでは仮に訴訟となった場合には、その記載内容の証拠力について、タイムカードや上司の印が押してある勤怠表には劣ります)。

ところがこのHさん、行動力と決断力のある方で、勤務開始から1か月経たない内に上記の事情や会社の風潮を見切って、「この会社は怪しい。ダメだ。」と、すぐに退社することを決めました。曰く…

 

不良債権が増えるのはマズイ。さっさと貰うもの貰って抜ける!!」

 

との判断。う~ん、「不良債権」という発想が興味深い!!いわずもがな、時間を費やして労働して賃金債権を得ても、それがきちんと支払われなければ不良債権化するということですが、未払賃金をそういう視点から捉えたご相談者は初めてだったので、新鮮な思いでした。ただし、この時点で賃金の支払日は到来していませんでしたから、未払いとなるのか否か、未定だったのですが、既に賃金の支払予定日は近かったので、対策を考えたうえで入金を待っていたところ、案の定…というべきか、支払予定日を経過しても入金はありませんでした。Hさんの見立てどおり、この会社はブラック企業だったのです。

しかし、早めにご相談を受けていましたし、未払いのケースを想定して、事前にどのように賃金請求するかについて方針を固めていたこと、Hさんがその方針どおりに上手く立ち回ってくれたことが幸いし、その後、割と早い時期に、無事に満額の回収ができました。「方針」の詳細については、これも今回のテーマの本筋ではありませんし、長くなってしまうので割愛としておきます(ブラック企業側に更なる対策をされても面倒なので、ブログでの公開はしないと思いますが)。

このケースの場合、Hさんの早めの決断が早期の満額回収の一つの要因であったとも思います。このような会社では、労働力を搾取するが対価は支払わないという性質が根底から浸透していることが多く、労働者の勤勉さにつけ込んで更に搾取の度合いを強めるケースがあります。Hさんが不安を感じながらもズルズルとアルバイトを続けていたとしても、当初聞いていた時給より安い時給での給与計算をされる、本来働いた時間よりも短い労働時間での給与計算をされるといった、不当な扱いを受けて泣き寝入りを余儀なくされていたかもしれません。会社側の確信的な証拠隠しにより、労働条件や労働時間を証明する資料がHさんの手元には乏しかったのですから。また、未払額が大きくならない内に手を打ったことで、会社側も早期に支払いを済ませる方向で考えた可能性もあります。それに…

 

いくら待っても、ブラック企業が自らホワイト企業に転換することは期待できないから!!

 

残念ながら…ね。だったら自分ですぐできる対策をした方が良いですよね。Hさんも今は賃金未払問題からは解き放たれ、すこぶる元気です。私も喜んでもらえて何よりと思えた案件でした。

真面目に働くことは大切ですが、そんな気持ちをブラック企業に悪用されて、
・本来受け取れるはずの賃金をもらえない
長時間労働で健康を損なってしまう
パワハラで精神的に病んでしまう
こんなことになる前に、「さっさと退職する」ことも選択肢の一つとしてあるんだってことを思い出してみてくださいね。最後にもう一点…

 

賃金債権は2年の消滅時効があるため、支払期日から2年を経過した時点で時効にかかってしまいます。

 

サービス残業等がある会社にお勤めの方は、この意味でも、あまり長期に渡って我慢するのは得策ではないと言えると思います。ご存知の方も多いかもしれませんが、ご注意ください!

今回はここまで。司法書士MY法務事務所ホームページ内、未払賃金・残業代請求のページはこちら☆

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No.34 株式会社の役員には任期があります。手続きを怠ると過料を科されてしまうことも!!

今回は、表題のとおり、株式会社の役員の任期を取り上げます。「役員の任期なんてちょっと調べればすぐ情報が出てくるし、知ってるよ。」なんて方も多いでしょうが、現実には、任期が切れているのに新たに役員を選任していないとか、登記手続をせずにそのまま放置しているなんてことがよくあります。しばらくそのままにしていても、誰も何も言ってこないから、「まぁいいか…。」なんて思っていると、忘れた頃に裁判所から過料の通知が届いてビックリ!!なんてことも…。

そこで今回は注意喚起の意味も込めて、役員、特に中小企業で問題となることが多い、株式会社の取締役、監査役を中心に述べます。監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社については、採用している会社の割合がそう多くはないことから割愛とします。

まずは、任期の原則です。

会社法第332条
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
②前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することを妨げない。
以下、略

会社法第336条
監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。
②前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することを妨げない。
以下、略

会社法の条文にはこのように記載があります。ポイントになるのは、次の箇所。

①任期の起算時期は、「就任後」ではなく、「選任後」。よって、株主総会で5月28日に選任されたところ、その就任の承諾が6月1日という場合には、起算日は5月28日となる。

②取締役、監査役ともに、公開会社でない(発行する株式の全てにつき、譲渡制限がかかっている)株式会社においては、定款で定めれば、「10年」に伸ばすことができる

③②の任期の伸長とは異なり、任期の短縮は、取締役については認められるが、監査役については認められない

 

実際に任期を計算する上では、「事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで」の部分がわかりにくいケースもあるかもしれません。取締役や監査役が定時株主総会で選任された場合には、「2年あるいは4年後の定時株主総会終結まで」と考えればわかりやすいのですが、臨時株主総会で選任された場合には、その選任日によっては少しややこしく感じられるケースが生じます。

例えば、事業年度が4月1日~3月31日とされている場合に、平成27年3月1日の臨時株主総会において選任及び就任承諾があった取締役の任期は、「選任日から2年=平成29年3月1日」までに終了する事業年度のうち最終のもの、つまり、平成27年4月1日~平成28年3月31日の事業年度に関する定時株主総会終結の時まで、ということになります。この場合には、単純に日付だけで考えると、平成27年3月1日~平成28年3月31日までの約1年間しか当該取締役の任期はないことになります。わかりにくくはあるのですが、この点を間違えると、後任の取締役を選任する必要が生じているのに、「任期はまだもう1年ある。」と考えて選任を怠ってしまうことになります。

任期切れとなった役員がいる場合、その後任者を選任することは会社の義務ですから、これを怠ると、「選任懈怠」として、100万円以下の「過料」が科されます。懈怠の期間や性質によって金額が決まっているようですが、「どれくらい懈怠するとどれ位の金額の過料が科されるのか」は正確にはわかりません。(経験則上、長期間に渡る懈怠の方が短期間のそれよりは過料の額は少ない傾向にありますが…。)

※ちなみに、選任及び就任があったものの、登記をしていない場合には、「登記懈怠」にあたってしまい、この場合にもやはり100万円以下の「過料」が科されます。

ところで現実の問題として、仮に役員変更の登記を司法書士に依頼したとしても、それだけで高額の報酬を請求する事務所はそう多くはないのではないでしょうか。…とすると、過料を支払うことを考えると、事前に相談する方が安心かつ安全ですよね。なすべき手続をしなかったことを原因に過料を科されたうえに、更に登記費用を費やすよりも結局安上がりになると思います。また、一度、役員変更を受任した場合には、次回の役員改選時期の案内をする事務所に依頼した場合には、事前に、「今回の定時株主総会において役員改選が必要ですよ。」などと通知が入るため、うっかり忘れてしまうことがなくなるというメリットもありますよ。

それでは最後に、選任を懈怠して過料が科されてしまったケースでの過料決定通知書を載せておきます。このケースでは約2年弱の間、役員の選任を怠った結果、3万円の過料が科されています。あまり届いてほしくない通知書ですよね…。このブログを読んでいただいた皆さんのお手元にはこれが届かないように、「懈怠」には充分ご注意くださいね!

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それでは今回はここまで☆
商業登記や企業法務に関する情報を公開中の弊所ホームページはこちらからどうぞ

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No.33 司法書士についてのパンフレット(日本司法書士会連合会出版)

日中は暑い日も増えてきましたが、皆さんいかがお過ごしですか?6/7(水)に梅雨入り宣言もありましたが今のところ、そんなに雨は降らず…。自転車移動が多い私としてはありがたいです(^o^)♪♪

さて、今回は、日本司法書士連合会(以下、「日司連」とします。)が、司法書士についてのパンフレットを作成したということで、これをご案内します。ざっくりと司法書士制度や現状を紹介した内容のものなんですが、今回のものは英、中、韓バージョンが用意されているんです!日司連がこのように外国人向けのパンフレットを作成することは珍しいので、宣伝のお手伝いです!?

全てのページを掲載すると、長くなってしまうので、1ページずつ、各バージョンを掲載しますね。

英語版

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中国語版

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韓国語版

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日本語版

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ここに画像として載せたページ以外のページについても、下記リンクよりダウンロードすることができます。興味のある方は是非どうぞ。

Please download the other pages of these pamphlets from the below link, if you're interested.

日本司法書士会連合会 | パンフレット等

 

リンク先には置いていないのですが、不動産登記及び商業登記業務についてのパンフレット(英語版のみ)も同封されていたので、こちらも掲載しておきます。

不動産登記業務

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商業登記業務

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我々司法書士は全員、事務所所在地の司法書士会に所属していますから、月に1度は業務に関する資料や研修情報が郵送されてきます。その中にこのパンフレットが入っていました。冒頭にも書いたように、日司連がこのように外国人の方向けの資料を用意するなんてことは珍しいのですが、せっかく作ってくれたのなら…ということで紹介してみました。

全国に22,283人(平成29年4月1日時点)と、士業の中でも人数が少なく、その職務内容を知らない方も多いとは思いますが、もっと知ってもらい、もっと身近に感じてもらえれば…と思います。

今回はここまで。上記パンフレットに記載されている業務はもちろん、それ以外の 業務も積極的に受託しているMY法務事務所のH.Pへは下記リンクよりどうぞ☆

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No.32 法定相続情報証明制度が平成29年5月29日からスタート!!

随分、久しぶりの更新となってしまいました。おかげさまで忙しくさせていただいております。ご依頼やご相談をいただいている皆様、ありがとうございます。さて、今回の更新ですが、以前、当ブログでも取り上げた「法定相続情報証明制度」がいよいよ約3週間後にスタート!!うまく利用すれば今までより便利になりますよ!ということで、今回はその内容が明らかになった法定相続情報証明制度についてご案内します。

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ちなみに、下記リンク先(法務省H.P)から制度案内のPDFをダウンロードすることができます。

法務省:「法定相続情報証明制度」が始まります!

当ブログ関連記事は下記リンク先よりどうぞ

myjimusyo.hatenablog.com

さて、この制度、結局何をするのか?簡単に言うと、相続手続をするにあたり必要となる相続関係の証明に用いることができる、「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けるものです。

そして、この交付を受けると何がメリットなのか?というと、不動産登記のみならず各種(金融機関での預金払戻しなど)の相続手続において、相続関係を証する資料として利用できる(戸籍謄本等を都度提出することが不要となる)という点になります。

「なーんだ、そんなことか。今までどおり戸籍謄本等を提出すればいいんじゃないの?」となりそうですが、実は手間の面でも費用の面でも恩恵があるのです。例えば被相続人が多くの金融機関に預貯金を有していた場合、相続手続の場面ではそれぞれの金融機関に対して戸籍謄本等を用いて相続関係を証することが必要となります。その全てが近隣の金融機関であれば良いのですが、遠方にしか店舗がないとか、その金融機関では店舗での相続手続を受け付けておらず郵送によるしかないというようなケースでは、戸籍謄本等が1部ずつしかないと各所に宛てて順番に提出するしかありません(数か所の金融機関に対して並行して手続を進めることができない)。従来、これを避けるには数通ずつ戸籍謄本等を取得するしかありませんでした。しかし、この費用は馬鹿になりません。戸籍謄本1通を取得する際の手数料は450円、除籍謄本や改正原戸籍は750円かかってしまいます。相続関係が複雑だったり転籍が多かったりすると結構な金額になってしまうのです。

労力の面でも、従来、相続関係を証する戸籍謄本等一式を各金融機関の店舗に持ち込む代わりに法定相続情報一覧図の写しを持ち込めば良くなりますから、持ち込む側も持ち込まれる側もメリットがあります。「これっていいんじゃないの?」って思いませんか?

さて、それではこの法定相続情報一覧図の写しの交付を受けるための手続の流れについては次のとおり。
①相続関係を証する戸籍謄本等一式を収集する
ここは従来どおり、本籍地の市区町村役場からスタートして遡っていくしかありません。
②法定相続情報一覧図を作成する
被相続人及びその法定相続人の情報を記載した図面(ただし、必ずしも図面の形式でなくてもよい。)を作成します。(補足①)
③法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をする
法務局に対して、上記①及び②を添付した申出書を提出します。(補足②及び③)
④認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付される
上記③で提出した申出書及び添付資料につき、登記官による確認がなされた後、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。併せて、提出した戸籍謄本等一式も返却されます。

(補足①)法定相続情報一覧図には、相続開始時の同順位の相続人を記載するものとされているため、1つの相続が開始した後、遺産分割協議や相続登記をする前に相続人が亡くなってしまう、いわゆる「数次相続」のケースでは、被相続人ごとに1つの申出を要します。
(補足②)法務局への持ち込みのほか、郵送での申出も可能です。
(補足③)申出先は、次のⅰ~ⅲのいずれを管轄する登記所(法務局)に対してもすることができます。
ⅰ 被相続人の本籍地または最後の住所地
ⅱ 申出人の住所地
ⅲ 被相続人を表題部所有者または所有権の登記名義人とする不動産の所在地

ちなみに、法定相続情報一覧図の写しの交付を受けるために法務局に手数料を納める必要はありません!!\(^o^)/多くの提出先がある場合には、数通まとめて交付を受けると良いですね。また、交付を受けたけど足りなくなったというような場合には、再交付の制度も用意されていますよ。

続いて、法定相続情報一覧図の写しの交付を受ける際の注意点を挙げていきます。
被相続人日本国籍を有しないケースなど、戸籍謄本等一式を申出書に添付することができない場合には、この制度を利用することはできません。
・前述の法定相続情報一覧図の写しの交付を受けるための手続の流れの③で提出された法定相続情報一覧図の原本は、法務局にて保管されることになりますが、その保存期間5年が過ぎると廃棄されます。よってその後に再交付を求めることはできません。
・代理人により、この制度を利用することはできますが、親族以外に申出人の委任を受けることができるのは、弁護士・司法書士土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士弁理士海事代理士及び行政書士(各士業法の規定を根拠に設立される法人を含む)のみとされています。

最後に、少し気になる点を1つ挙げます。法定相続情報証明制度は不動産登記など法務局所管の手続の他に、金融機関での相続手続の際に法定相続情報一覧図の写しが利用されることも予定しています。ただし、現時点で金融機関側ではこれにつき、公式に「利用可」との広報はなされてはいないようです。ただし、需要の多い制度ですから運用が開始されればすぐに答えははっきりすると思います。

なお、弊所でも遺産承継業務など相続手続を行うにあたり、法定相続情報一覧図の写しを積極的に利用することになりますが、法定相続情報一覧図の写しの交付申出(必要な書類の収集及び作成も含む)のみの代理業務も承ってまいります。是非、お気軽にお問合せください!

相続に関する情報ならこちら。弊所H.P内「相続関連業務」のページを覗いてみてください☆
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No.31 突撃!官公署の食堂 その1 東京法務局

今回の更新は、全く業務に関係のない話題。ただのグルメ情報!?です☆官公署の食堂に興味のある方は、お気軽にご覧ください(いるのだろうか…)。

この仕事をしていると、官公署を訪れる機会が多いのですが、そのなかでも特に多いのが東京法務局本局。オンライン申請した際の添付書類を持参したり、謄本をとりに行ったり…。東京法務局本局は最寄駅で言うと九段下駅。九段第二合同庁舎内にあり、MY法務事務所からは自転車で5分ほどの距離なのでちょくちょく訪れるのです。閉庁時間(17:15)少し前に訪れることも多いのですが、そんなときに寄ってみるのが食堂。東京法務局の食堂は地下1階にあります。ちなみに不動産登記部門は4階、商業・法人登記部門は3階にあるので、わざわざ行こうと思わなければあまり行く機会がないような場所です。

営業時間はランチ営業が11:30~13:30、夜が17:00~20:00となっています。ランチと夜の間はやっていませんので注意!!

あえて閉庁前に訪れ、仕事を済ませてから食堂で夕食をさっと食べて帰るというのが黄金パターン(笑)17:00を過ぎても食券販売機のお金投入口に「停止中」の札が貼られたままなことがあるのもご愛敬。そんなときは、中のおじさんに「食べたいんだけど」と伝えてください。おもむろに「停止中」の札を外してくれます^_^;

夜営業の客が少ないからか、ゆる~い感じでやってます。席は50~60席位あるのでしょうか(うろ覚えですが…)。そして大抵貸し切り状態です。ゆっくり食べられますよ。

それではメニューを少しご紹介。まずは、ポークソテー定食(460円)を頼んだら出てきたビーフシチュー定食!!なぜそうなったかと言うと…

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おじさん曰く、「ポークソテーは時間かかるからビーフシチューでいい?」とのこと。他に誰もいなかったからなのか…、どっちも好きだからOKしたらこんなに豪華なのが出てきました。デザートにロールケーキも付いてました。おじさんありがとう\(^o^)/

ちなみにサラダにかけるドレッシング類も冷蔵庫に入っています。セルフで使うタイプですね。

そして、こっちがポークソテー定食(460円)

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この日は、おじさんがやる気があったのかもしれません(笑)ポークソテーというか、チーズが乗ったとんかつと言った方が正確かもしれませんが「そんなの関係ねぇ(古い)」なのです。完食後は食器をカウンターに戻して「ごちそうさま」。ゆる~い空気の漂う、落ち着ける食堂です。

他にも麺類等あるのですが、私はいつも定食なので麺類の写真はありません。興味がある方やお近くの方は、覗いてみてはいかがでしょうか。

それでは今回はここまで☆お役立ち情報満載の司法書士MY法務事務所のホームページも是非、ご覧ください。

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No.30 「節税目的の養子縁組も直ちに無効とはならない」と最高裁が判断

久しぶりの更新となってしまいました。新年1回目は1月中に更新したかったんですが…(> <)さて、昨日のことなんですが、相続税の節税を目的としてなされた養子縁組の有効性が争われた裁判で、「養子縁組の主な目的が節税であっても直ちに無効とはならない」との最高裁の判断が示されました。これまでも相続税対策として養子縁組が使われるケースは多かったのですが、その有効性につき最高裁が追認するようなものとなりました。

具体的な事例は、次の図を見てください。

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まず、被相続人甲の生前に、甲とその孫乙との間で養子縁組がなされました。ところが、一審及び二審判決によると、縁組成立後に甲とその長男Aの関係が悪化したようで、甲の長女及び次女が「養子縁組は無効」として提訴したというものです。

というのも、縁組については、その要件として縁組意思(戸籍の届出をする意思及び社会通念上真に親子と認められるような関係を設定する意思)の合致が要求されているからです。したがって、たとえ届出の意思が合致していたとしても、新に親子関係を築く意思がないときには縁組は無効となります(最判昭23.12.23)。
 
今回のケースは、一審では養子縁組を有効としたものの、二審では、Aが税理士を連れて甲のもとを訪れるなど、度々、甲が節税効果の説明を受けていた経緯等を踏まえ、「(この養子縁組は)相続税対策が目的で、真の親子関係をつくる意思が無かった」として、養子縁組は無効と判断されていました。
 
しかし、1月31日の最高裁の判決では、「節税の目的があるからといって養子縁組の意思がないとは限らず、主な目的が節税でも直ちに無効にならない」との判断が示されました。そのうえで、今回のケースでは、「縁組の意思がないことをうかがわせる事情はない」として養子縁組は有効と判断されたという訳です。この判断から考えるに、今後、縁組が無効となるのは、当事者に全く縁組(親子関係をつくる)意思がない場合などに限られそうで、今後も養子縁組を用いた相続税対策が進むものと思われます。
 
ところで、そもそも養子縁組による相続税対策はどのようなメリットが得られるのでしょうか。主なものを以下に挙げていきます。
 
 相続税基礎控除額が増える
基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数であるため、法定相続人(養子)を増やすことで、基礎控除額を増額できます。ただし、基礎控除額が増える養子の人数は、
・実子がいる場合は1人まで
・実子がいない場合は2人まで
であり、養子を増やせば増やすほど基礎控除額も上がっていくという訳ではありませんので注意が必要です。
 
②死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額が増える
死亡保険金及び死亡退職金については、500万円×法定相続人の数が非課税となるため、法定相続人(養子)を増やすことで、非課税となる額を増額できます。ただし、これにも①と同様の人数制限が適用されるので、やはり注意が必要です。
 
③(相続財産が多額である場合)相続税の総額が少なくなる
少しややこしい話ですが、相続税の計算上、相続税総額の算出時に課税遺産総額を法定相続人に法定相続分割合で割り当て、速算表に沿って各人の相続税額を割り出す作業があります。その合計額が相続税の総額となる訳ですが、速算表は法定相続分に応じる取得金額が増えるほど税率がどんどん上がる超過累進税率が採用されているため、法定相続人(養子)を増やすことで各自の法定相続分割合が減り、より低いランクの税率が適用されるようになります。そしてその結果、相続税の総額が少なくなるのです。ただし、遺産総額によってはあまり効果が出ないケースがありますから事前のシュミレーションをおすすめします。
 
これに対して、主なデメリットとしては、以下のものが考えられます。
 
①配偶者の税額軽減額が少なくなる場合がある
配偶者の相続については、法定相続分または1億6,000万円の内、いずれか多い金額までは相続税がかからないという制度があることはよく知られているところですが、養子縁組をすることで配偶者の法定相続分が減るため、軽減額も少なくなるケースがあるということです。例えば、子がいないために兄弟の子、すなわち甥や姪を養子にするというような場合において、本来であれば配偶者の相続分は3/4、被相続人の兄弟姉妹の相続分が1/4ですが、養子縁組をすることにより配偶者の相続分は1/2、養子の相続分も1/2となります。このように配偶者の税額軽減額が少なくなりますから、多額の財産を配偶者に残したいと考えている場合には、注意が必要です。
 
②遺産分割協議がまとまらなくなる可能性が増える
遺産分割協議は相続人全員でする必要があります。養子も相続人となる訳ですからやはり参加は必要です。人数が増えれば、まとまる話もまとまらなくなる可能性は増加します。
 
③孫を養子とした場合でも、2割加算の対象になる
これは養子縁組した場合のデメリットというより、法定相続人以外の者に遺産を承継させる場合の注意点でもありますが、法定相続人以外の者が相続により財産を取得した場合には、その者の相続税額は2割加算されます。養子も一親等血族であり、子である以上法定相続人となるのですが、相続税の算出の場面では孫を養子とした場合であっても2割加算の対象から外すことはできません。
 
 
いかがですか?養子縁組をするということは、家族が増えるのと同様のことですから、節税面からのみならず、遺産の分配に大きく影響することや、更には今後の家族関係のあり方などを多角的に検討のうえ、慎重に決めるべきです。また、上記のメリット及びデメリットの検討のためにも、事前に専門家に相談し、シュミレーションをすることをおすすめします。
 
それでは今回はここまで。お役立ち情報満載の司法書士MY法務事務所のホームページも是非、ご覧ください。

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No.29 判例変更! 預貯金は遺産分割の対象となります

随分と寒くなってきましたね。年の瀬ということで皆さんお忙しく過ごされているのではないでしょうか。さて、今回はタイトルのとおり、平成28年12月19日、最高裁大法廷において、「預貯金は遺産分割の対象となる」との判断が示されたことについて。従来、「預貯金は遺産分割の対象外」とされてきた訳ですが、この点、判例変更されたということで、その内容や影響について触れてみたいと思います。

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従来、相続の場面において、「金銭その他の可分債権については、遺産分割を経ずに、相続開始によって当然に各共同相続人にその相続分に応じて承継される」として扱われてきました。分割債権説とも言われる考え方ですね。

これが今回の判例変更で、預貯金についても、「預金者の死亡により口座の契約上の地位は相続人全員で共有されており、法定相続割合では当然には分割されない」、「預貯金は遺産分割の対象となる」とされたという訳です。

どういうことなのか?

例えば、遺産が自宅不動産と預貯金2,000万円だったとしましょう。遺言はなく、相続人は故人の子であるA及びBの2名だったとします。この場合に、自宅不動産はA及びBによる共有状態となり遺産分割の対象となるが、預貯金については遺産分割を経るまでもなく、相続開始と同時にA及びBがそれぞれ1,000万円ずつ取得すると考えるのが従来だったのです。

しかし、この考え方、次のような場面では問題が生じます。

遺産が預貯金2,000万円のみで遺言はなく、相続人は故人の子であるA及びBの2名とします。そして故人の生前にAのみが1,000万円の贈与を受けていたような場合、従来の考え方によると、遺産である預貯金2,000万円をA及びBが1,000万円ずつ取得することになりますが、その結果、Aは故人から計2,000万円、Bは計1,000万円を受取ることになってしまい不公平が生じてしまうのです。

この点については、「預貯金を遺産分割の対象外とすると公平な分配ができない」と、しばしば指摘されてきました。大法廷も「公平な遺産分割のためには、できる限り幅広い財産を対象とすることが望ましい」と指摘し、この度の判例変更に至ったという訳です。

よって今後は、不動産等と同様に、預貯金についても遺産分割の対象になることとなります。既に済んだ遺産分割に適用はされませんが、今後行われる遺産分割には適用されます。

ただし、ここで述べておきたいのは、従前から、相続人全員の合意により預貯金も遺産分割の対象とすることはできていたということ。(実際に弊所で相続手続をさせていただいた事案でもそうしていることがほとんどです。)円満に遺産分割が合意に至った場合はもちろん、争いがあり家庭裁判所に持ち込まれた場合でも、相続人全員の合意を得て預貯金も遺産分割の対象としてきたという経緯がありますから、現に係争中というケースはともかく、直接的に大きな影響を受ける方はそう多くないかもしれません。

気をつけなければいけない点としては、金融機関での預金の取扱いではないでしょうか。従来は、各相続人が自らの相続分にあたる部分については預金の払戻しを請求することができました。(とは言っても、金融機関が相続争いに巻き込まれるのを防ぐため、相続人全員の合意がないと払戻さないなど、各機関により独自のルールを設けているため、必ずしもすぐに払戻されるとは言えませんでしたが…。)しかし今後は、遺産分割終了までは払戻さないという取扱いをする金融機関が増えるものと予想されます。

なお、このような取扱いがされることによって、故人名義の口座から生活資金を支出していた配偶者等は、当面の生活費や葬儀費用に充てる金銭の払戻しができなくなってしまう事態が懸念されるため、現在、法制審議会において何らかの対策を検討しているようです。

今回の判例変更は実務上、既に主流となっている方法に沿うものであり、支持できるものですが、これにより当面の生活費に困る人が生じないように、関係各所には具体的な運用にも気を配ってほしいですね。

それでは今回はここまで☆
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