千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.15 東京司法書士政治連盟主催の空き家問題に関する研修(講師 上田真一氏)に参加しました。

先日、行われた東京司法書士政治連盟主催の研修、「空き家問題の現状とその対策」に参加してきました。メディアにも露出のある上田真一氏(NPO法人空家・空地管理センター代表理事)が講師ということで、法律家である自分とは違った角度からの空き家問題に関する捉え方が聞けるのではないかと考えたのですが、結果としては、かなり近い視点から空き家問題を見ているのではないかなという印象を受けました。

ちなみにNPO法人空家・空地管理センターホームページ内、上田真一氏の紹介ページはこちら。とても気さくな方で、ありのままの空き家問題を語っていただき、有意義な研修でした。

www.akiya-akichi.or.jp

冒頭にも書いたとおり、今回の研修参加前は、上田氏は自分とは異なる視点から空き家問題を見ているのではないかという予想をしていたのですが、研修を終えると、実際にはかなり近い視点で捉えているのではないかと感じました。特に、

・空き家問題というのは放置していてもリスクを負うばかりで所有者にとって得なことは非常に少ない。にも関わらず、目先の費用がかかることや法的問題があることで面倒だから放置している人が多い。

という点を空き家が増加する原因の大きなものと考えているところは、共通認識だと感じました。何らかの動機付けがなされなければ、費用や手間をかけてまで問題の解決の為の行動に向けては動き出さないといったところでしょうか。つまり、法的に云々言っても、費用や手間をかけるだけのメリットがなければ所有者の方も動かないのが現実なのです。

じゃあそのメリットを産む方法って…結構色々あるんです。例えば…

①使用する予定がないのであれば、売却して現金化する。
現金化して有効に使うというのがまず考えられます。仮に相続手続きが終わっていないという場合であれば、現金化して相続人間で分けることとすれば公平に分けやすくなります。遠方にあるため、売却手続きが面倒だという場合には、売却代理の形を採るのも有効です。

②賃貸物件として活用する。
もし、物件が古くなってしまっていれば、リフォームしたうえで賃貸するようにすれば眠っていた資産を活用することができます。もし、賃貸した後の賃借人とのトラブルが不安だというのであれば、定期建物賃貸借(契約更新がないことを前提とする賃貸借契約)を利用するなど、対策をしておけばよいのです。

③活用を業とする業者に任せる。
賃貸物件として活用するとしても運営が面倒だとか、空き家とは離れた地域で暮らしているため、賃貸管理ができないという場合であれば、不動産の活用を業とする業者(不動産信託会社)などに任せるのもありです。賃貸以外の活用方法も検討してくれます。ただし、「物件の価格が〇〇円以上が対象」といった条件が付いている場合があるので、事前に検討が必要です。小規模な活用では、借り上げ制度を利用した賃貸経営というのも考えられます。借り上げ制度を利用すれば、賃借人が入らないなどの不安は解消されます。ただし、直接賃貸する場合よりは収入は少なくなる欠点はあります。

他にも活用の方法はあるでしょうが、結局のところ、行動すれば眠っている資産が利益を産みだす宝になるってことなんです。そして、更に恐ろしいのが…

 

空き家を放置するデメリットは想像以上に大きい!!

 

ってこと。代表的なものだけでも次のようなものがあります。

①空き家に適切な管理を施していなければ、所有者は多額の賠償責任を負う場合があります。
民法第717条1項では、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とされています。つまり、「空き家の安全性をしっかり保たなければ、他人に損害が生じたときに空き家所有者は賠償しなければならない。」ということです。(ちなみに条文に出てくる「占有者」は空き家の場合、存在しないのが通常です。)具体的な事例で言うと、空家の外壁材が剥がれて飛散し、通行中の小学生に当たって死亡させたという事例では、賠償金は5,630万円と試算されています。放置された空き家が倒壊し隣家に倒れかかったため、隣家も崩れ居住者を死亡させたという事例では、2億円超の賠償金が試算されています。ちなみにこの所有者の責任は無過失責任(過失が無くても責任を負う。)であり、非常に重いものとなっています。

②火災等含め、様々な近隣被害が生じる。
空き家は人目につきにくく、庭にゴミが捨てられたりすることも多いことから、放火のターゲットとして狙われやすくなります。また、放置された庭木が隣家に向かって伸びていくことも多く、ご近所トラブルの種になります。更に、捨てられたゴミが悪臭を放ち、近隣から苦情が寄せられることにもなります。このような事態を放置していれば、我慢できなくなった近隣住民から訴訟を起こされることもありますし、その結果、多額の賠償金の支払いを余儀なくされることにもなります。

③空き家の不動産価値や換価可能性が低下する。
空き家を放置すれば、当然ながら建物は傷み(建物は、誰も住まず放置している状態でもどんどん傷んでいきますよ。)、庭の草木は生い茂ることになります。そうなれば、不動産としての価値は低下しますから、その売却価格は安くなってしまいます。放置することで、日々、資産を失っていると言えるでしょう。ちなみに、近隣に問題となるような放置空き家があると、その近隣の物件の資産価値にも影響が出ますから当然、ご近所さんにも嫌がられます。

このように、空き家放置のデメリット、めちゃくちゃ大きいんです。なのに未だに放置している所有者の方が多いのは何故か?実は、アンケートからも判明していることですが、空き家問題が解決しない原因の大きなものとして、「特に大きな問題と考えていない。」というのがあるんです。つまり、「いつかは何とかしないとな。」なんて思いつつもそのまま放置…。これが多いんです。

 

空き家は放置していれば現状維持…ではありません。日々、マイナスとリスクが増加していますよ!!

 

ということは、ここまで読んでいただいた方ならご理解いただけると思います。転じて言えば、

 

ここで行動を起こせば、マイナスとリスクが無くなり、プラスが生じますよ!!

 

ということも、ご理解いただけると思うのです。詳細な活用方法まで考えるのは難しくても、専門家に相談するだけなら簡単だし、そこで受けた提案を聞いて選択するというのであれば、「面倒」というハードルは下がってきます。空き家所有者の方、これから所有者となられる可能性がある方、一度、検討してみることをおすすめします。

 

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上田氏が空き家問題に関して出版した書籍です。研修中に目次を見るくらいの時間があったので、目を通して即、購入することにしました。他の専門家はどのような事例に直面しているのか、興味もありますし視野を広げる意味でも…。読み終わったら感想でも述べようかな…なんて。

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