千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.25 生前退位に強いご意向 天皇陛下のビデオメッセージを拝見して…。

本日、天皇陛下がビデオメッセージにより、お気持ちを表明されました。報道もされているように、「生前退位」に強いご意向をお持ちのようですね。このお気持ち表明により、一気に議論が加速するのではないでしょうか。今回はこの件について、少し述べたいと思います。

まずは、陛下のお言葉を次に記載します。

 

「戦後七十年という大きな節目を過ぎ、二年後には、平成三十年を迎えます。
 私も八十を越え、体力の面などから様々な制約を覚えることもあり、ここ数年、天皇としての自らの歩みを振り返るとともに、この先の自分の在り方や務めにつき、思いを致すようになりました。
 本日は、社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら、私が個人として、これまでに考えて来たことを話したいと思います。
 即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました。伝統の継承者として、これを守り続ける責任に深く思いを致し、更に日々新たになる日本と世界の中にあって、日本の皇室が、いかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っています。
 そのような中、何年か前のことになりますが、二度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました。既に八十を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています。
 私が天皇の位についてから、ほぼ二十八年、この間(かん)私は、我が国における多くの喜びの時、また悲しみの時を、人々と共に過ごして来ました。私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。天皇が象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めると共に、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました。皇太子の時代も含め、これまで私が皇后と共に行(おこな)って来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井(しせい)の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした。
 天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます。また、天皇が未成年であったり、重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には、天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。しかし、この場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。
 天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ二ヶ月にわたって続き、その後喪儀(そうぎ)に関連する行事が、一年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。
 始めにも述べましたように、憲法の下(もと)、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。
 国民の理解を得られることを、切に願っています。」

 

さて、そもそも、皇室典範には次のような規定があります。

皇室典範 第4条(即位)
天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。

皇位継承が生じる場面を、「天皇が崩じたとき」に限定しているため、陛下が生前退位を望んでいたとしても、現状のままでは実現しないということです。皇室典範の改正が必要だということですね。皇室典範も法律の1体系と考えられていますから、通常の法改正と同様に、国会で決議を経れば改正することは可能です。

ただし、現在の日本国憲法では、「天皇は、国政に関する権能を有しない(4条抜粋)」とされていることから、陛下自ら、「私は生前退位したいから皇室典範を改正してくれ。」と注文するようなことはできません。そこで、今回のお気持ち表明という形を採られたのでしょう。このような形をとってまで、お気持ちを述べられたのは、やはり生前退位に強いご意向を持たれているのだと思います。

生前退位を認めるか否かという点については、賛否両論あるようですが、私は認めて良いのではないかと考えています。古来には、武力や権力を背景に皇太子を担ぎ出して当時の天皇に強引に譲位を迫るといった例も少なからずあったようですが、現在の天皇には、前述のとおり国政に関する権能はありません。ゆえに、仮にこの先の天皇が譲位したいという意向を示された場合、それが天皇ご自身の意向を無視したものとなることはあまり考えにくいのではないでしょうか。また、譲位を政治的に利用するということも無いとは言い切れませんが、仮にあったとしても、国政に関する権能が無い以上、政治に関しての影響はそう大きくはないのではないかと思います。

何より、そのような小難しい理屈を抜きに考えても、天皇陛下とはいえ1人の人間だということを鑑みれば、高齢からくる体調の不安を理由に譲位したいとの想いは認められるべきでしょうし、上記の事由が陛下の気持ちを抑えつけるほどの説得力を持つとは思えません。

「一般人と一緒にするな!」とお叱りを受けそうですが1点述べさせてもらうと、私は職業柄、高齢者の方のご相談を受けることも多くあります。最近流行りの言葉で言えば、「終活」についてのご相談を受けることも…。やはり皆さん、自分の老後や残りの人生についてそれぞれに願望もあれば心配もあります。自らが亡くなった後の相続のことや家族のことが気になるのです。天皇陛下といえど、この点は変わらないのではないでしょうか。むしろ、立場がある分だけ、考えなければならないことは多く、陛下の「終活」ともなればやるべきことは多岐にわたります。今後の公務のことやご家族のことを思えば、自ら体力が残っている内に譲位したいというお気持ちになられたのもわかる気がします。

一般人には定年退職がありますし、例えば自営業であっても辞めたくなったら辞める自由はあります。職業選択の自由が制限される天皇という立場にあるとは言え、陛下は既に82歳。一般人でも仕事をされている方はそう多くはない年齢ではないでしょうか。現在、陛下には3日に1回の割合で予定が入っている状況とのことですが、もう充分、国のために尽力されてこられたと思います。ご希望どおり天皇を「退職」し、残りの人生をゆっくりお過ごしいただきたいものです。

 

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