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千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.19 パチンコ台の釘を曲げた店長が書類送検! 何でそうなるの??

今月初めに、京都府城陽市のパチンコ店運営法人と店長が「パチンコ台の釘を不正に曲げた(広げた)」として、書類送検されました。具体的には抽選入場口に玉が入りやすくなるように広げたそうですが、一般的には「それって日常茶飯事じゃないの?何でそんなことで事件になるの?」って思う方も多いことでしょう。そこで今回は、元パチンコ店店長の経歴を持つ私がこの件を少し掘り下げてみたいと思います。

ちなみに記事は、次のように取り上げています。
『パチンコ台の大当たり抽選入賞口に玉が入りやすくなるようくぎを不正に広げたとして、京都府警生活安全対策課と城陽署は2日、風営法違反(無認可設備変更)の疑いで、京都府城陽市のパチンコ店運営法人と、男性店長(46)を書類送検した。府警によると、店長は容疑を認め、「集客して利益を増やすためにやった」と供述している。

 書類送検容疑は1月19~24日、5回にわたり、府公安委員会の承認を受けず、店内のパチンコ台2台の大当たり抽選入賞口に玉が入りやすくなるよう、くぎを曲げたとしている。

 パチンコ台は、国家公安委員会が指定した試験機関「保安通信協会」の定める出玉率などの基準に合格したものしか設置することができず、無許可でくぎを曲げることも禁止されている。

 府警によると、店長は売り上げが低迷していた平成26年末ごろから、設置している百数十台のパチンコ台の大半で、ハンマーなどで大当たり抽選入賞口上部のくぎを広げるなどし、玉を入りやすくすることで射幸心をあおり集客増を図っていたという。

 今年1月ごろ、業界関係団体で組織する遊技産業不正対策情報機構が府警に申告。府警がパチンコ台を押収して鑑定した結果、不正が発覚した。

 不正に改造されたパチンコ台をめぐっては、昨年11月、ギャンブル性を高める「くぎ曲げ」が横行しているとして、警察庁が業界団体に不正機の撤去を要請している。』

www.sankei.com

で、そもそも一般的な認識としては、「釘は日々、調整してあるのが普通じゃないの?」って感じじゃないでしょうか?こういう道具を使ってカツンコツンと…。

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でもこれ、実は勝手に調整してはいけないんです風営法関連規則において、パチンコ台の釘は「(盤面に対して)おおむね垂直に打ち込まれている」ことが義務付けられています。つまり、「おおむね垂直」ではないものとする釘調整は違法ってこと。しかし、業界の慣例でどこの店舗でも行われてきました。実際、「おおむね垂直」の状態では玉は入賞しにくいし、大当たりしても出玉は少なくなるでしょう。また、客側のニーズとして、ギャンブル性の高い機種が人気が出やすいということもあります。パチンコ店も商売として営業している訳ですから、そのニーズに応えようとするのは当然で、釘調整により出玉を多くしたり、入賞率を調整したりすることとなるのです。この問題については長年、暗黙の了解のような形で見逃されてきたといってもいいでしょう。

 

では、なぜ今回、釘調整を行ったパチンコ店長が書類送検されるという事態になったのか!?

 

これについては…
・釘を曲げることで射幸心を煽ったから
・2015年から、釘曲げについて指導を開始したが従わないから見せしめに
・世間のパチンコ業界に対する風当たりの強さから動かざるを得なかった

なんてことが言われているようですが、正確なところはわかりません。実際には、ほぼ全ての店が釘調整をしているという実態を把握していながらも、今まではお目こぼし的に見逃してきた訳ですから、何故今回だけ?という疑問が生じるのは当然です。ただ、上記で述べたように、元来、釘調整は違法な訳ですから、ついに本来のあるべき姿に戻そうとしてきたと解釈することもできるかもしれません。また、パチンコ業界自体の規模は縮小しているものの、1人当たりの消費額は増大していることから、ギャンブル性の高さに警鐘を促すものとも言えるかもしれません。

実は、業界においてのパチンコ台及びパチスロ台のギャンブル性の高さについては、従来から問題ありとして指摘がなされてきました。そもそも日本では、賭博は原則として違法です。しかし、パチンコについては、刑法第185条但書の「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」にあたるものとして、あくまで「娯楽」の範囲で許されているものです。ゆえに、そのギャンブル性の程度やパチンコ店の運営については、従来より監視の目が向けられてきました。

※参考 刑法条文
(賭博)
第185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

ご存知の方も多いとは思いますが、パチンコ店の運営って「遊技場営業」として風営法の規制を受けています。開店時だけではなく、新台の入れ替えなんてのも実は許可を受けなければいけません。そして設置されるパチンコ台についても保通協(保安通信協会)の基準を満たした物しか置くことはできません。

つまり、新台入替の一般的な流れとしてはこうなります。(ちなみに、許可は公安委員会がなすのですが、その申請の窓口は管轄警察署の生活安全課の許認可係となりますから、地域によって多少の違いはあるかもしれません。)

1.パチンコ台(新機種)を開発したメーカーが保通協の検査を受ける。
2.合格したパチンコ台を購入したいパチンコ店はメーカーと売買契約を交わす。
3.パチンコ店は、新装開店日に間に合うように許可を取得する。
4.新台の営業開始。

もちろん、検査の日だけクリアすればその後はどのように使ってもOKというのでは「ざる」になってしまいますから、

 

許可を受けたパチンコ台は、そのままで使用するべし!勝手に変更してはいかんよ!

 

というのが建前というか、本来のルールなんです。これらのことが、風営法ではどのように定められているのかと言うと、「ぱちんこ屋」は第2条1項7号で「設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる営業」として「風俗営業」にあたるものと定められています。また、営業の許可の基準としては、第4条4項で、「公安委員会は、当該営業に係る営業所に設置される遊技機が著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める基準に該当するものであるときは、当該営業を許可しないことができる。」と定められています。更に、遊技機の増設、交替その他の変更については、第19条10項で準用する第9条1項で「あらかじめ公安委員会の承認を受けなければならない。」とされています。つまり、釘を曲げることは「その他の変更」にあたり、本来、公安委員会の承認を受けなければならないというわけです。

だから、釘を叩いて開けたり閉めたりなんてのは本来、その都度、承認を受けるべきものなんですね。でも実際には承認を受けることなく当たり前に行われています。だって、これをしなかったら、同じ台がずっと出続けたり、逆にひたすら出ない台や回らない台ってのが生じることになっちゃいますから。仮に釘をいじる度に承認申請されるとすると警察としても業務が滞ってしまうという実質的問題も…。そんなわけで、業界の実態としては、警察もそこまでは細かく指導はしてこなかったという経緯があります。だからこそ、今回の事件が業界に驚きをもたらし、今後の取扱いはどうなるのかという点に注目を集めていると言えるでしょう。

釘調整なしでは成り立たないパチンコ台とそれを本来禁止している風営法、相容れないものを今後、どのように成り立たせるのか、元業界人として気になるところではあります。ちなみに、元店長の立場から言わせてもらえば、長期的に見て客の側が勝つということはかなり考えにくいことです。パチンコ、パチスロが趣味だという方はほどほどに遊ぶことをオススメします。まして借金をしてまで…というのはもってのほか。翻って司法書士の立場から言わせてもらえば、ギャンブルによる借金は破産手続において免責不許可事由となりますので、のめり込みにご注意くださいね。それでは、今回はこの辺で。

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