千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

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No.34 株式会社の役員には任期があります。手続きを怠ると過料を科されてしまうことも!!

今回は、表題のとおり、株式会社の役員の任期を取り上げます。「役員の任期なんてちょっと調べればすぐ情報が出てくるし、知ってるよ。」なんて方も多いでしょうが、現実には、任期が切れているのに新たに役員を選任していないとか、登記手続をせずにそのまま放置しているなんてことがよくあります。しばらくそのままにしていても、誰も何も言ってこないから、「まぁいいか…。」なんて思っていると、忘れた頃に裁判所から過料の通知が届いてビックリ!!なんてことも…。

そこで今回は注意喚起の意味も込めて、役員、特に中小企業で問題となることが多い、株式会社の取締役、監査役を中心に述べます。監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社については、採用している会社の割合がそう多くはないことから割愛とします。

まずは、任期の原則です。

会社法第332条
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
②前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することを妨げない。
以下、略

会社法第336条
監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。
②前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することを妨げない。
以下、略

会社法の条文にはこのように記載があります。ポイントになるのは、次の箇所。

①任期の起算時期は、「就任後」ではなく、「選任後」。よって、株主総会で5月28日に選任されたところ、その就任の承諾が6月1日という場合には、起算日は5月28日となる。

②取締役、監査役ともに、公開会社でない(発行する株式の全てにつき、譲渡制限がかかっている)株式会社においては、定款で定めれば、「10年」に伸ばすことができる

③②の任期の伸長とは異なり、任期の短縮は、取締役については認められるが、監査役については認められない

 

実際に任期を計算する上では、「事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで」の部分がわかりにくいケースもあるかもしれません。取締役や監査役が定時株主総会で選任された場合には、「2年あるいは4年後の定時株主総会終結まで」と考えればわかりやすいのですが、臨時株主総会で選任された場合には、その選任日によっては少しややこしく感じられるケースが生じます。

例えば、事業年度が4月1日~3月31日とされている場合に、平成27年3月1日の臨時株主総会において選任及び就任承諾があった取締役の任期は、「選任日から2年=平成29年3月1日」までに終了する事業年度のうち最終のもの、つまり、平成27年4月1日~平成28年3月31日の事業年度に関する定時株主総会終結の時まで、ということになります。この場合には、単純に日付だけで考えると、平成27年3月1日~平成28年3月31日までの約1年間しか当該取締役の任期はないことになります。わかりにくくはあるのですが、この点を間違えると、後任の取締役を選任する必要が生じているのに、「任期はまだもう1年ある。」と考えて選任を怠ってしまうことになります。

任期切れとなった役員がいる場合、その後任者を選任することは会社の義務ですから、これを怠ると、「選任懈怠」として、100万円以下の「過料」が科されます。懈怠の期間や性質によって金額が決まっているようですが、「どれくらい懈怠するとどれ位の金額の過料が科されるのか」は正確にはわかりません。(経験則上、長期間に渡る懈怠の方が短期間のそれよりは過料の額は少ない傾向にありますが…。)

※ちなみに、選任及び就任があったものの、登記をしていない場合には、「登記懈怠」にあたってしまい、この場合にもやはり100万円以下の「過料」が科されます。

ところで現実の問題として、仮に役員変更の登記を司法書士に依頼したとしても、それだけで高額の報酬を請求する事務所はそう多くはないのではないでしょうか。…とすると、過料を支払うことを考えると、事前に相談する方が安心かつ安全ですよね。なすべき手続をしなかったことを原因に過料を科されたうえに、更に登記費用を費やすよりも結局安上がりになると思います。また、一度、役員変更を受任した場合には、次回の役員改選時期の案内をする事務所に依頼した場合には、事前に、「今回の定時株主総会において役員改選が必要ですよ。」などと通知が入るため、うっかり忘れてしまうことがなくなるというメリットもありますよ。

それでは最後に、選任を懈怠して過料が科されてしまったケースでの過料決定通知書を載せておきます。このケースでは約2年弱の間、役員の選任を怠った結果、3万円の過料が科されています。あまり届いてほしくない通知書ですよね…。このブログを読んでいただいた皆さんのお手元にはこれが届かないように、「懈怠」には充分ご注意くださいね!

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それでは今回はここまで☆
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