千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.3 アディーレに景品表示法に基づく措置命令 債務整理はどんな事務所に依頼するべき?

昨日、「消費者庁弁護士法人アディーレ法律事務所(代表・石丸幸人弁護士)に対して景品表示法に基づく措置命令を出した。」との報道がなされた件についての話。代表の石丸氏は某テレビ番組にも出演していた弁護士ですが…。


報道によると、アディーレは過払金返還請求の着手金を「1か月限定」「今だけの期間限定」で無料や割引にするなどとキャンペーンの宣伝を繰り返し、実際は5年近く続けていたとのこと。これが景品表示法の「有利誤認」にあたるとして、こうした表示をしないよう求める措置命令を出したということです。

景品表示法では、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示することや過大な景品類を提供することで消費者を釣ることを規制しています。この内、今回問題となった「有利誤認表示」は、商品者サービスなどの取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示のことを言います。ざっくり言うと、「これはめちゃお得!」と思わせておいて実際はそうではない場合ですね。

アディーレのキャンペーンはこれにあたるとされた訳です。5年近くキャンペーン(無料か割引かは知りませんが。)を続けていたということは、キャンペーン適用後の価格が実質上の正規の値段だったのでしょうし、今回の措置命令がなければ今後もずっとそうだったのでしょうから消費者庁の判断は支持できますね。個人的には、先生と呼ばれながらこのような「儲かれば何をやってもいいんだ!」主義なやり方をする連中は大嫌いなので。弁護士や弁護士法人に対して、景品表示法に基づく措置命令が出されるのはこれが初めてなのですが、同様のやり方をしている事務所はまだあると思います。改めてほしいですね。

まったくどうでもいい余談ですが、商店街でたまに見かける「常に閉店セール」の店を思い出しました。「いつ閉店するんだよっ!?」って突っ込んでしまうやつ(笑)。

それはさておき、ここからが本題。債務整理を依頼する方って基本的に切羽詰まってます。「毎日催促の電話がすごいから、今すぐにでも何とかしてくれ。」なんてのは当たり前。だから精神的にも弱ってる方が多いんです。そんなところに「今なら着手金無料!すぐにでもご依頼ください。」なんて言われると、飛びついてしまいますよね。でもでも待ってくださいよ。その事務所は本当に親身になって対応してくれる事務所なんですか?そこで今回は…

債務整理ってどんな事務所に依頼すればいいの?

という点について、思いつくことを綴ってみます。まず最初に、

①弁護士や司法書士が直接対応しないところはダメ。
弁護士事務所でも司法書士事務所でも、資格者が直接対応しないところはおすすめしません。基本的に無資格者(事務員や補助者)より資格者の方が給与が高いので、経費節減しすぎている事務所は無資格者の割合を高くして、本来資格者がするべき業務を無資格者にさせたりしています。もちろん事務員や補助者の方も業務遂行上、必要な戦力ですが、必ず資格者がするべき業務範囲はあると思います。例えば、1度も資格者と依頼人が面談せず、無資格者主導で案件を進めるなんていうのはもってのほかです。

②大手事務所が安心とは限らない。
ダメとは言わないですよ。色んな事務所がありますから、ちゃんとやってる事務所もあります。ただ、どうも大手事務所でテレビや電車内の吊り広告しまくっているところは…依頼前によく吟味すべきかと思いますね。あれだけの広告費はどこから出ているのかと…。同期の司法書士債務整理専門の大手司法書士事務所Sに入所して1か月で「ここで得るものはない。代表には理念がない。金儲けしたいだけだ。」と言ってたのを思い出します。他にも大手事務所で勤務した人が何人もいますが、大体同じことを言うんですよね。しかも案件を早く終了して回転率を上げるために過払金の回収額を安めで妥協したり、時間がかかる割に利益にならなそうだと判断したら、受任せずに法テラスにたらい回しにする事務所も少なくないとのこと。働いてる側も依頼者の為じゃなく上司によく思われるような仕事のやり方をせざるを得ないとの話も聞いたことがあります。「うちの事務所では○○千件解決しました!」とか「過払金が○○円戻ってきました!」って広告をよく見ますが、そんなの問題じゃない。「いくらの過払金があって、何%回収したのか」、「それで依頼人は満足してるのか」、「受任者はやれることは全部やったのか」じゃないかと思ってしまうんですよ。だから、依頼を考えている方は、よくよく検討して決めた方がいいですよ。

③最終的な決断を依頼者に選ばせてくれない事務所はダメ。
過払金返還請求をしていると、交渉はつきものです。例えば、過払金が100万円あるとして、「(返還額は)50万円でどうですか?これで無理なら(訴訟)手続してもらってもいいですよ。」などと消費者金融会社の担当者が言ってきたとします。このときに、時間がかかってもいいから返還額をもっと上げてほしいと考えるか、早期に50万円戻ってくるならこの金額で和解しようと考えるか、最終的な決断は依頼人に決めてもらうべきだと考えます。もちろん、判断に必要な材料は提供するのは当たり前として。ここで、受任者が早期に案件を終了して報酬を得たいから依頼人に和解を勧めるというような事務所や、受任者側で交渉の方針を勝手に決めてしまう事務所は問題外だと思います。

ざっと思いついたところを綴ってみました。債務整理を考えている方は参考にしてみてください。いずれにしろ、じっくり相談のうえで、納得してから正式に依頼することが大切ですよ。

弊所ホームページには過払金返還請求・債務整理等の専門ページがあります。良かったら覗いていってください。

No.2 固定残業制だからサービス残業はしょうがない…ことはありません!

数日前に、『来春卒業の学生に対する企業の採用広報活動が、来たる3月からスタートすることを受けて、大学教授や弁護士などで構成する「ブラック企業対策プロジェクト」が、厚生労働省に対して求人情報の表示に関する申し入れを行った。』

との記事を見つけて、ちょっと思い当たることがあったので、ちょっと一言。

報道によると、今回の申し入れは主に、いわゆる「釣り広告」を止めるように事業主に呼び掛けるよう、厚労省に求めているようです。その中でも特に「固定残業代」の表示方法について、詳細が明記されていない場合が多く、これに釣られる学生が多いとのこと。

これ、納得です。規模の大きな会社でさえ、固定残業代についてはきちんと表示せず、入社した後に気付くような仕組みを敢えてとっている会社は結構あります。これから就職しようとする学生はそこまでは気がつかないケースが多いでしょうし、そもそも「残業代はちゃんともらえますか?」なんて入社説明会や面接では聞きにくいですからね。しかも、日本社会は未だに転職が否定的に見られてしまうことも多いから、入社した後で「こんなはずじゃなかった。」と気付いても、なかなか辞めづらい。まぁこういう人集めの方法を使っている会社はそこまでわかったうえでやっているんでしょうが…。

さて、ここで「固定残業代」について、簡単に説明すると、「あらかじめいくらと設定されている残業代」のことです。例えば、「残業代は月5万円(月40時間、これを上回る手当は支給しない。)」などと決められている場合を指します。(ちなみにこのような定め方は無効です。詳細は後で説明します。)このような定め方に従うと、40時間を超えて残業した場合は働けば働くほど労働者は損をすることになります。いわゆるサービス残業ですね。例えば月に20時間程度しか残業がない月もあるという場合は、労働者にもメリットがあるのですが、現実には、まず毎月40時間を超えて働かせる会社が敢えてこの制度を悪用している場合が非常に多いのです。

就活中の方、よく調べてから決めた方がいいですよ!そして既に、「そんな会社で日々、サービス残業だよ。」という方には、是非、泣き寝入りせずに残業代を請求することをおすすめします。

でも、就業規則で決まってたら、従うしかないんじゃないの?

いえいえ、そんなことはありません。就業規則で定めていれば何でも有効という訳ではありません。固定残業制が有効となるには次の要件を満たしていることが必要です。

①固定残業制を採用することが労働契約や就業規則の内容となっていること。(就業規則において定めている場合には、労働者に周知されていることを要します。)
②通常の労働時間に対する賃金と、固定残業部分に対する割増賃金部分が明確に区別されていること。

労働基準法に基づき実際の残業時間を基に計算した割増賃金の額が固定残業部分に対応する割増賃金の額を超える場合には、その差額を支払うこと。

これら①~③の要件を満たさない場合には、その会社における固定残業制の定めは無効です。そして、固定残業制を採用している会社の多くが要件を満たしていないんです、残念ながら…。私が以前、担当していた未払残業代請求事件においても、ある一部上場企業の100%子会社である全国規模の会社において、毎月のようにサービス残業が50時間前後存在するという事例がありました。このときの未払残業代はかなり高額なものになりました(既に解決済みで、しっかり払っていただきましたけどね。)。ですから、「毎日サービス残業だよ。」という方も諦めるのは早いですよ!

そうそう、多くの方が退職後に未払賃金を請求されると思いますが(在籍中は居づらくなるという理由で、実際に請求するのは退職後という方が多いんです。)、できれば在籍中にタイムカード、就業規則、給与規程、労働契約書などの証拠はコピーを取るなどして収集しておいた方がいいですよ。辞めてからだと集めにくくなりますからね。タイムカードさえ採用されていない場合には、毎日の就業時間を手帳などにメモしておいてください。それでも証拠として使えますよ。

余談ですが、私は月曜9時放送の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」というドラマを観ています。主人公が務めている介護施設や相手役が務めている引越し会社もかなりブラックだな~なんて視線で見てしまうんですよね。職業病かな…(笑)最終的にはハッピーエンドになってほしいけれど…。タイトルから察するにそうはならないのか…。

弊所ホームページには未払賃金・残業代請求の専門ページがあります。良かったら覗いていってくださいね。

 

No.1 資産家女性の相続問題 ドラ娘の全面敗訴でめでたしめでたし…とはいかないんじゃないかってこと

2016.1.24(日)

平成23年に「遺産は全て家政婦に渡す」との遺言を残して亡くなった資産家女性(当時97歳)の実の娘2人が、遺言に反して遺産を不当に持ち去ったとして、家政婦の女性(68歳)から遺産の返還を求められていた訴訟につき、東京地裁が家政婦の女性の全面勝訴とする判決を下した。

との件につき、少し述べてみます。

報道によると、資産家女性が昭和59年に夫から財産を相続した時点で、その額は10億円超だったそうで、その後平成15年に「遺産は全て家政婦の女性に渡す」との遺言書を作成し、8年後の平成23年に亡くなったとのこと。

すると亡くなった当日に、実の娘2人が遺産の大半にあたる約3,000万円を自己の口座に移したということらしいです。

この約3,000万円ですが、遺言が有効だとすると1次的には家政婦に渡ることになります。しかし、娘サイドとしては、「遺言は家政婦の女性が資産家女性を騙して作成させたもので無効」、「(遺産が想像以上に少ないことから)家政婦の女性は資産家の女性の生前から資産を着服していた」と主張し、遺言は無効だから法定相続人である自分達が遺産を承継するべきとしていたようです。

法廷では、①遺言が有効か無効か、②家政婦の女性は資産家女性の財産を着服していたのか、という点が争いとなりました。

これについて、裁判所は、①につき、「遺言作成当時は介護を期待できる実の娘は移住してしまっていた。その中で長年自分を支えてきてくれた唯一の存在である女性に感謝し、全資産を譲る心境になるのは自然だ」とし、遺言は適正なものだと認定しました。②については、「使途不明金はカネ遣いの荒い実娘側に渡るなどしたと考えられる。女性による着服は認められず、推認すらできない」と断じました。

この背景には、実の娘達が資産家女性の生前から「海外に移住するため」との理由で資産家女性に対して金の無心をしていたことや、移住すると言いながらすぐに帰国し、同居していた時期には、資産家女性が財産を奪われることを危惧していたことが明らかになったなど、実の娘達が介護もせずに資産ばかりに執着していたという事情があります。

はっきり言えばこの娘達は、親の面倒も見ずに金の無心ばかりしていたドラ娘なのであって同情の余地はなく、判決は妥当なものだと思います。

 

さてさて、前置きが長くなりましたがここからが本題!

この話、実は、めでたしめでたしとはいかないんじゃないかってことです。

 

報道されていることを前提に考えてみると、娘達が移した約3,000万円は家政婦の手に渡ることになるのですが、これ、恐らく娘達は遺留分減殺請求をすることになると思います。他に兄弟姉妹がいるのか不明なので、どれくらいの割合かはともかく、実の娘となると遺留分を有しています。

この遺留分ってものはなかなかに強力で、遺言があったとしても、これに反して一定の相続人に一定の割合の相続権を保証するものです。つまり、今回のケースで言うと、娘達2人にもある程度の割合(仮に資産家女性の子がこの2人だけとすると、それぞれ4分の1)の相続権があるということになるのです。これだけ遺産に執着がある娘達のことですから、周囲にどう思われようと遺留分減殺請求を行使するのではないでしょうか。そうなると、遺産の一部は資産家女性の意思に反して娘達のもとに渡ってしまいます。

 

それでは、このような事態を避けるために、資産家女性は生前にどのような相続対策をとるべきだったのでしょうか?

 

まず、考えられるのは「遺留分の放棄」です。
これは、被相続人(今回のケースで言うと資産家女性)の生前からできるもので、「遺留分を放棄する」旨を相続人(今回のケースで言うと娘達)が家庭裁判所に申述し、許可審判がなされれば相続人は遺留分を失うという制度です。(なお、相続開始後であれば家庭裁判所の許可は不要です。)ただし、相続人が申述することを要するため、今回のケースのように相続人が遺産に執着している場合には利用は難しいでしょう。

 

次に「相続人の廃除」です。
これは遺留分を有する相続人の相続権を奪いたいときに、被相続人家庭裁判所に請求して相続権を奪う制度です。生前にもできますし、遺言でもすることができます。これをしておけば対象者の相続権を失くすことができますから、当然に遺留分も失われます。ただし、廃除には相続人に廃除事由があることが要件となります。その要件は次のとおり。

①相続人が被相続人に対して虐待をしたこと。
②相続人が被相続人に重大な侮辱を加えたこと。
③相続人にその他の著しい非行があったこと。

この内のいずれかがあるときに廃除の対象となるのですが、報道されている限りだとかなり頻繁に、しかもかなり多額の金銭を無心していた点、更に移住資金と言いながらもすぐに帰国していることから、実際には遊興費に使っていたのではないかと思えます。仮にそうだったとすれば③の要件は満たすものと考えられますから、資産家女性としては生前か遅くとも遺言にて廃除の意思を表明しておけば、全ての遺産を家政婦の女性に渡すことができたと思われます。残念ながら今回のケースではそのような対策はされていなかったようですが…。      

 

もし、廃除の3つの要件をいずれも満たさないときはどうでしょう。採り得る手段を挙げるとすれば「民事信託」があります。中でも「遺留分対抗型信託」を用います。例えば、委託者兼当初受益者を資産家女性、家政婦の女性を受託者、二次受益者を家政婦の女性及びその子、三次受益者を家政婦の女性の子とし、信託契約には「受益権は相続により承継されない」旨、「受益権は受益者の死亡によって消滅し、次順位の受益者が新たな受益権を取得する」旨を定めておきます。こうしておけば、受益権の承継は相続ではなく信託契約の効果により発生することとなり、遺留分減殺請求の対象とはなりませんから、資産家女性が亡くなったときも財産を娘達に奪われることはありません。

ただし、民事信託は新しい手法ですから、受益権の承継が遺留分減殺請求の対象とならないという点につき、はっきりとした判例がないため、ほんのわずかに法的に不安定な部分が残ります。しかし、仮に受益権が遺留分減殺請求の対象になると判断されたとしても、娘達は単に受益権の一部を得るだけですし、その一部は娘達が亡くなったときには家政婦の女性やその子に帰することになりますから、相続法のルールに依るよりは資産家女性の意思の実現に近づくでしょう。

 

最後は少し専門的で難しい話になってしまいましたが、採り得る手段の1つとして知ってもらいたいので述べました。民事信託は、その内容が千差万別であるためにここで多くをご説明することはできませんが、興味のある方は弊所ホームページの該当ページをご覧ください。

いずれにしろ、相続には様々な要因が絡みますから一筋縄ではいきません。遺言書を作成しておくことはもちろん大切なことですが、どんな場合でも遺言書作成のみで対応できるという訳ではありませんから、相続に関してご希望やご不安があるという方は是非、専門家にご相談されることをおすすめします。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
興味のある方はこちらにも散歩してみてくださいね♪