千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.35 ブラック企業に入ってしまったら…。とっておきの作戦がある!!

皆さんこんにちは。本日のテーマは、「ブラック企業に入ってしまったとき、どうすれば良いのか…。」です。求人情報や面接の段階で、「この会社は残業はあるのか、あるとすれば残業代はちゃんと出るのか。」、「求人情報には週休2日」と書いてあるけど、本当に休めるのか。」なんてことを考えることってありますよね。だけど、「書いてあるんだから、そうなんだろう。」って素直に受け取れないなんてことも…。なぜなら…

 

求人情報に書いてあることや面接のときに聞いた情報と、実際の勤務形態や待遇が違うなんてことはざらにあるから!! 

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もちろん、こんなことがまかり通っていてはいけないのですが、現実には横行しています。その結果、「こんなはずじゃなかった。」、「とんでもない会社に入ってしまった。」と後悔する羽目になってしまう。そんなご相談をよく受けます。

けど、実際には入社してみないとわからないことってたくさんありますからね。そして入社後に、「しまった!!」と思ってもこのご時勢、「やっと見つかった仕事だからすぐ辞める訳にも…。」とか、「その内慣れれば何とかなるんじゃないか…。」なんて我慢するということも…。

でもどうでしょう。毎日のように長時間労働が続く企業、休みがとれない企業、サービス残業が当たり前の企業、パワハラがある企業などなど…。それらブラック企業の経営陣が自ら進んで、「よしっ!うちの会社はこれから残業を減らすぞ」とか、「サービス残業はいけないな。これからは働いた分の残業代を支給するぞ!」なんてことになると思いますか?

 

ならないっ!!残念ながら、そうはならないっ!!

 

まぁ全くないとは言いません。…がそれは何らかの対処せざるを得ない要因(社会的圧力や制裁を恐れて、とか、実際に労働問題が生じたことを契機にしてなど)があるからであって、ブラック企業の経営陣がある日、自ら経営方針をホワイトに転換するなんてことは、ほぼないと言って良いでしょうね。そりゃそうですよね。だって…

 

自らホワイトに転換するという考え方を有している経営者なら、最初からブラックにしないから!!

 

つまり、「いつか変わるかも」なんて我慢してても大抵の場合、それは実を結びません(ブラック企業離職率が高いので、割と早く出世の順番が回ってくることはあっても、積極的にホワイト企業になることはない、という意味で)。

じゃあ入社した後、その勤務先が実はブラック企業だと気付いてしまった場合、どうすれば良いのか。例えば、サービス残業が多いというケースであれば、退社までにしっかり証拠を集めて、残業代を請求するということが考えられます。また、パワハラがあるといったケースであれば、やはり証拠を収集しておいて慰謝料請求するという方法が考えられます。ただし、長時間労働はあるけどきちんと残業代は支給されているというケースでは、解決方法は複雑になるかもしれません。

長時間労働が常態化している職場においては、その原因が経営陣のみならず、労働者側にもあるケースが存在するからです。単に、「仕事量が多い」ということであれば、新たに人を雇うなど、1人あたりの仕事量を減らすことで解決でき、これは経営陣側の問題と言えるでしょう。

しかし、中には残業代目当てであえて帰らない人がいたり、そういう人(とは言っても、「あえて帰らないのではなく、帰りたいのに帰れないポーズ」をとっている)が周囲に多いために、自分だけ帰るのは気が引けるといった雰囲気ができてしまっているケースでは、労働者側でも意識改革をしなければ解決が難しくなります。

具体的には、
・経営者や直接の上司が残業せず、定時に終業、帰宅する。
・残業を減らしている、減らすために努力をする社員を評価する。
・作業の効率性を上げるための手法を全社で共有する。
・仕事の分配を再検討し、適正なものとする。
・有給の取得を奨励、あるいは強制取得とする。
といったことが考えられます。

ただし、今回のテーマとは外れるので、この点については別の機会に譲ることとして本筋に戻り、「入社した後、その勤務先が実はブラック企業だと気付いてしまった場合、どうすれば良いのか」を考えた場合、最も効率的な対策の一つを紹介します。それは…

 

ブラック企業からはさっさと退職すること!!

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※荒木先生、ごめんなさい

 

もちろん、諸々の事情により、ハマるケースとそうではないケースもあるとは思いますが、最近、こんなご相談がありました。

相談者(仮に「Hさん」とします。)がアルバイトとして入社した会社では、労働契約書を交わすでもなく、勤務時間や時給は口頭で説明があっただけ。就業規則データ形式で職場のPCに保存してあるものの、これを見たければ上司にパスワードを聞かねばならない。そして、上司に頼めば渋々見せてはもらえるものの、印刷することは禁止されていて、その理由を聞くと、「就業規則はしょっちゅう変わるから印刷しても意味がないから。」と言われたそうです。

就業規則には労働者への周知義務があるから、いつでも労働者が見られるようにしておかなければならないし、また、労基署への届出義務もあるから、しょっちゅう変わるとしたらしょっちゅう届出ないといけないことになるけど、そんなこと本当にしてるの?そんな会社あり得るの??変わったらそのときに、また新しいものを印刷すれば良いんじゃないの?なんて当然の疑問はさておいて、結局この会社、なぜそのようなことをしているかというと、Hさん含む全アルバイトとの労働条件の内容について、確たる証拠は残さないという状況をあえて作っていました。

更に、Hさんが実際に働いた労働時間についても同様にデータとして管理されていたそうですが、やはり印刷はできない状況にあったとのこと。つまりこの会社、「時給何円で合計何時間働いたか」について、確信的に、後に争いとなった際の客観的資料を残さないようにしていたという訳です(Hさんは自身で毎日の労働時間についてはメモを残していたのですが、これだけでは仮に訴訟となった場合には、その記載内容の証拠力について、タイムカードや上司の印が押してある勤怠表には劣ります)。

ところがこのHさん、行動力と決断力のある方で、勤務開始から1か月経たない内に上記の事情や会社の風潮を見切って、「この会社は怪しい。ダメだ。」と、すぐに退社することを決めました。曰く…

 

不良債権が増えるのはマズイ。さっさと貰うもの貰って抜ける!!」

 

との判断。う~ん、「不良債権」という発想が興味深い!!いわずもがな、時間を費やして労働して賃金債権を得ても、それがきちんと支払われなければ不良債権化するということですが、未払賃金をそういう視点から捉えたご相談者は初めてだったので、新鮮な思いでした。ただし、この時点で賃金の支払日は到来していませんでしたから、未払いとなるのか否か、未定だったのですが、既に賃金の支払予定日は近かったので、対策を考えたうえで入金を待っていたところ、案の定…というべきか、支払予定日を経過しても入金はありませんでした。Hさんの見立てどおり、この会社はブラック企業だったのです。

しかし、早めにご相談を受けていましたし、未払いのケースを想定して、事前にどのように賃金請求するかについて方針を固めていたこと、Hさんがその方針どおりに上手く立ち回ってくれたことが幸いし、その後、割と早い時期に、無事に満額の回収ができました。「方針」の詳細については、これも今回のテーマの本筋ではありませんし、長くなってしまうので割愛としておきます(ブラック企業側に更なる対策をされても面倒なので、ブログでの公開はしないと思いますが)。

このケースの場合、Hさんの早めの決断が早期の満額回収の一つの要因であったとも思います。このような会社では、労働力を搾取するが対価は支払わないという性質が根底から浸透していることが多く、労働者の勤勉さにつけ込んで更に搾取の度合いを強めるケースがあります。Hさんが不安を感じながらもズルズルとアルバイトを続けていたとしても、当初聞いていた時給より安い時給での給与計算をされる、本来働いた時間よりも短い労働時間での給与計算をされるといった、不当な扱いを受けて泣き寝入りを余儀なくされていたかもしれません。会社側の確信的な証拠隠しにより、労働条件や労働時間を証明する資料がHさんの手元には乏しかったのですから。また、未払額が大きくならない内に手を打ったことで、会社側も早期に支払いを済ませる方向で考えた可能性もあります。それに…

 

いくら待っても、ブラック企業が自らホワイト企業に転換することは期待できないから!!

 

残念ながら…ね。だったら自分ですぐできる対策をした方が良いですよね。Hさんも今は賃金未払問題からは解き放たれ、すこぶる元気です。私も喜んでもらえて何よりと思えた案件でした。

真面目に働くことは大切ですが、そんな気持ちをブラック企業に悪用されて、
・本来受け取れるはずの賃金をもらえない
長時間労働で健康を損なってしまう
パワハラで精神的に病んでしまう
こんなことになる前に、「さっさと退職する」ことも選択肢の一つとしてあるんだってことを思い出してみてくださいね。最後にもう一点…

 

賃金債権は2年の消滅時効があるため、支払期日から2年を経過した時点で時効にかかってしまいます。

 

サービス残業等がある会社にお勤めの方は、この意味でも、あまり長期に渡って我慢するのは得策ではないと言えると思います。ご存知の方も多いかもしれませんが、ご注意ください!

今回はここまで。司法書士MY法務事務所ホームページ内、未払賃金・残業代請求のページはこちら☆

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