千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.14 障害者差別解消法が施行されます。 ってどんな法律なんだろう?

本日、4月1日から障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が施行されます。と言っても「何それ?」って方が多いと思います。概要を一言で述べるのは難しいですが、簡単に言うと、「不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供を求めることで、障害がある人もない人も共に暮らせる社会を目指す」ための法律です。

内閣府その他で、わかりやすいリーフレットが作られているので、そちらを見ていただくのがわかりやすいと思います。下記リンクよりご覧いただけます。

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1点だけ、付け加えておくと、『この法律の対象となる「障害者」は障害者手帳を持っている方に限りません。』これ自体はリーフレットにも記載されていることですが、実際、障害者と健常者の境目って、そんなにスパッと割り切れるものではないんです。日本では一般的にIQ70以下だと(軽度)知的障害者とされていますが、「じゃあIQ71だと誰の手助けも要らないのか?」というとそうではない。例えばアメリカでは、IQ71~85の日本では知的障害者にあたらないとされる人達も支援を受けていたりします。IQは、あくまで目安としての数値でしかないんですよね。何が言いたいかというと、「法律でわざわざ定めなくても障害の有無に関わらず共に過ごせる社会であってほしい」ということです。

さて、業務と関連することでお話しすると、知的障害者のお子さんを持つご家庭ではいわゆる「親亡き後問題」というのがあります。ご両親が亡くなった後、知的障害者であるお子さんが財産を承継したとしても、それをどう管理していくのか、施設への支払いなどはどうするのか、悪い人に騙されて奪われないか、というような課題にどう対処するかの問題です。成年後見人をつけるというのも1つの手段ですが、その場合、お子さんが相続した財産は厳しい財産管理の下に置かれますから、いくらお子さんのためであっても財産を使うことができないという状況に陥ります。成年後見制度を利用した場合には、後見人によって、とにかく財産を減らさないように管理されます。例えばお子さんに積極的に何かを学びたいという意思が生じたとしても、その費用として財産を柔軟に使うことはできません。それでは、ご両親も自ら亡き後のお子さんのことを思うと安心できないのではないでしょうか。

このようなケースに対応できるのが民事信託(家族信託)です。上記のようなケースであっても、信頼できる受託者に財産を託しておけば、ご両親亡き後も、受託者がご両親に代わってお子さんのために財産を管理運用できます。仮に、お子さんが何かを始めたいと決心した時にも、必要な費用は受託者が柔軟に支出することができます。わかりやすくするために、次の図でご説明します。

 

障害者等支援信託

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A及びBの子Cが知的障害者である子、DはCの弟とします。このケースにおいては、A及びBは財産を受託者Dに託します。A及びBの生前は財産をA及びBのために使うものとし、A及びB亡き後は、C及びDのために使うものとします。これにより、Cのために必要な費用は信託財産の中から受託者が柔軟に支出できることとなります。Dは信託財産と自らの固有財産とは分別管理する義務を負い、信託財産は信託契約で定めた目的のためにのみ使われることになりますから、その面からもご両親は安心できます。また、将来、Cが亡くなった時には、その受益権はDに移動することからCの相続開始による混乱も避けられます。こうして親亡き後問題は解消されることになるのです。

このような内容は民事信託契約において定めることになりますが、契約であることからその定め方は非常に自由度が高くなります。よって、様々な家族構成やご事情、ご要望に対応することが可能です。お悩みの方は1度ご検討されることをおすすめしますよ。

司法書士MY法務事務所では、お客様の理想の相続を実現すべく、民事信託スキームの構築、運営支援その他サポートに積極的に取り組んでいます。弊所ホームページ内、民事信託(家族信託)特集ページはこちら。是非、覗いてみてください。

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No.13 女性管理職を2020年までに30%まで引上げ ほとんどの企業でムリ!!

政府が掲げた目標「2020年までに女性管理職(課長相当職以上)の比率を30%程度まで引き上げる」について、読売新聞社がアンケートを採ったところ、国内主要114社中、達成を見込める企業が1割程度にとどまったとのことです。少し前に大きく報道されていたので、皆さんの記憶にも新しいところなのでは?

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報道によると、現時点で目標の30%を達成しているのは、旅行業の1社のみ。その他、百貨店や金融など9社で20%代であり、女性が多い職場の方が目標達成に近い位置にあるようです。これに対して、ゼネコン、電機、自動車業など43社は3%未満とのこと。

2020年までには未だ数年あるものの、調査対象の企業の内、既に目標達成済みのものと達成見込みのものを加えても、11%にしか至らず、最初から達成を考えていないとする企業も5%存在するなど、今回調査対象となった企業のほとんどで目標達成は難しいと考えられているようです。

www.yomiuri.co.jp

当初から、賛否両論噴出していた目標だっただけに、予想の範囲内とも言えるのでは…といったところですが、この現状を打破すべく、女性活躍企業を更に優遇することになる模様です。その内容としては、国の事業の入札に関して優遇することが予定されています。具体的には、総合評価落札方式(価格以外の要素も加味して評価する方式)による入札において、女性管理職の比率や育児休暇取得率が高い企業に加点するとのこと。つまり、入札により仕事を取りやすくなるということですね。この4月から段階的に始めることとされています。総額は5兆円規模とのことですから、もしかすると効果は出るのかもしれません。

www.nikkei.com

ただし、ご褒美は増えたものの、そもそも賛否両論となっている原因、「意欲や能力のない人を無理に登用すべきでない。」、「独身や子供のいない女性ばかりが登用されるのではないか。」という指摘や、最近大きな話題となった保育園の整備といった問題の解決は未だどうなるのか見通しはたっていませんから、これは今後の課題となるのでしょうか。いずれにしろ、男女問わず能力が公平に評価されるようになれば、わざわざ優遇措置など取らなくて良くなるのでしょうね。

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No.12 犯罪口座の残金を給付型奨学金に…。 返済不要になります!!

3月17日の金融庁の発表によると、振り込め詐欺などに使われた金融機関口座の残金を、犯罪被害者の子供に対する返済不要の給付型奨学金に活用するということです。ちなみに現在は、無利子の奨学金として貸与しているものの、利用者は低所得者層が多く、申込件数も少ないことから給付型にするとのこと。奨学金を利用して学校を卒業したものの、社会人となってからもその返済に追われる方が増えていることは以前より報道されていましたから、新たな制度を利用できる方にとっては、不幸中の幸いとなるのでしょうか。

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ところで、「『振り込め詐欺などに使われた金融機関口座の残金』って何なの?」ってならないですか?振り込め詐欺は言わずとしれた犯罪ですが、これによってお金を振り込ませた口座は詐欺グループが頻繁に出金しています。いわゆる「出し子」ってやつですね。詐欺に気付いた被害者が口座番号を通報して、口座を抑えられるとお金を下ろせなくなるからなるべく早めに出金するのです。しかし、例えばマークされていた出し子が出金時に逮捕されたというような場合、口座にお金が残ったままとなります。この残ったままのお金、実は被害者に返ってくる途が用意されています(といっても、全額返ってくるとは限りませんが)。返金を受けるには一定の要件を満たし、手続を経ることが必要ですが、被害者が返金を受けず、そのまま口座に残ってしまったのが、今回の「残金」で、これを給付型奨学金の原資にしようと言う訳です。

No.12は、残金が振り込め詐欺などの被害者に返ってくる手続があまり知られていないことから、これを機会に簡単にご案内します。この制度は、振り込め詐欺救済法という法律に規定されています。一定の手続を経ることで、「残金」から返金を受けることができるのです。概要は、次の図表をご覧ください。

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簡単に言うと、振り込め詐欺などに使われた口座の情報を得た金融機関は該当の口座を凍結します。そして、預金保険機構のH.Pで口座名義人の権利を消滅させる公告手続を経た後、被害者からの支払申請を受けて分配金を支払うという流れです。該当の口座に複数の被害者が振込んでいた場合には、各被害者の被害額の割合で按分することになります。また、支払の原資は、口座凍結時の口座残高が限度となるため、凍結前に引き出された額だけ原資が少なくなってしまいます。原資を超えた部分を金融機関が支払ってくれるものではありません。よって、振り込んだ額全てが戻ってくるとは限らないということにはなりますが、被害者の方にはこの制度を利用して少しでもお金を取り戻してほしいですね。次の図は、「各被害者の被害額の割合で按分」がどのようになされるかを示したものです。

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注意しなければならないのは、あくまで「振込」が前提となるので、現金を手渡したとか郵送したというケースは対象外だということ。よって、この制度を利用することはできません。

預金保険機構のH.Pを利用すれば、振込口座を覚えていればもちろんのこと、ある程度覚えているという場合にも、わかる情報だけを入力することである程度、口座情報の絞り込みができます。現在、その口座と口座内のお金がどのような状態にあるのかを、調べることもできます。被害にあったままで泣き寝入りせずに調べてみるのもいいかもしれません。もちろん、警察にも被害届を出してくださいね。(下記リンクより預金保険機構の該当ページへ飛ぶことができます。)

振り込め詐欺救済法に基づく公告トップページ


さて、話題を最初に戻して、このような返金手続もされず、口座に残ったいわゆる「残金」は平成26年度末でなんと57億円ほどあるそうです。金融機関が被害者に連絡をすることにはなっているものの、連絡がつかなかったり、被害者自身も家族に知られたくないために返金手続に関わりたがらなかったりということがあるようです。本来、被害者の手元に戻るべき財産ですが、このような事情を踏まえると、困っている苦学生のために使うというのは賛成です。

それにしても振り込め詐欺、なかなか無くなりませんね。随分前から話題になっていて知らない人はいないのでしょうが、それが詐欺だとは気付かないんでしょうね。よく言われていることですが、例えばお子さんからの電話で振り込みを依頼されても、一旦電話を切った後で、こちらから(電話帳に登録済の)お子さんの番号宛にかけ直すというのは有効ですよ。親切心や親心につけこむ卑劣な犯罪には本当にご注意ください!!

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No.11 事務所の癒し力UP♪ 自分では絶対置かなかったろうな…

難しい話が続いていたので、息抜きに…。最近、司法書士MY法務事務所の応接スペースに、電波時計と花(造花)がやってきました。と言っても自分で買ってきたわけではありません。お世話になっている女性士業の先生お二人から事務所移転祝いとしていただいたのです。ここ1~2週間の間に…ということなんですが、ありがたいことです。自分ではこういうものをセットすることを考えなかったろうな…なんて思います。まぁ私のバイブルは「北斗の拳」ですからしょうがない(笑)。置いてみるとやっぱり雰囲気が変わります。これが女性ならではの感覚か!!

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電波時計の送り主は、私が大阪の司法書士事務所で勤務していた頃に、指導係を受け持ってくれた先輩司法書士H先生。どこか天然臭の漂うほんわか系司法書士。大阪で開業後、現在は順調に業績を伸ばされているとのこと。ちなみにH先生の開業祝いに私が送ったのは「北斗の拳」全巻セット!!H先生には男の子がいるので、読んでもらおうってことで(・.・;)実はこの電波時計、最初はなかなか電波をキャッチせずに開梱から5時間くらい時刻合わせができませんでした。結果、いつまでも1月1日元旦…。ほんわか系のH先生からの贈り物だけにそういうことなのか!?と思い始めた頃、ようやく電波をキャッチしました。今では正確に時刻表示してくれますよ。H先生ありがとうございますm(__)m

そして、造花の送り主は、私が開業して最初にお客様をご紹介いただいた税理士のA先生。やり手の先生なんです。私は花の世話なんておそらくやらないだろうなって思われたんでしょう。しっかり造花にしてくれてました。当たりです(笑)。そしてメールでの連絡「花に水をあげないでくださいね。」

!!!???

いやいや先生、さすがにそこは気づくでしょうと。写真をよく見ていただくとわかるのですが、鉢の中に水面のようなものが見えると思います。これ、水を模しているんですよ。でもでもこれって配達されてきたわけで、いくら私でもさすがに本物の水でないことは気づきますよ!!と返信したところ、「税理士M先生(A先生とのご縁をいただくきっかけをくださった方、ちなみに男性)は水やりをしていたそうです。」とのこと。つまり、同じことをやらかすんじゃないかっていう…^_^;

う~ん、なるほど(納得)

それにしても、お二方、事務所に癒しをいただきありがとうございますm(__)m 是非、遊びにいらしてください☆


ところで話は変わって、シドニーでホームレスが増えているそうです。

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記事は以下のとおり。

シドニーの市職員とボランティアが2010年以来非公式に行っている路上での野宿者数調査「ストリートカウント」で、市内の路上で寝起きしているホームレスの数が486人と、前年から約25%増加し、調査開始以来最多となった。

ムーア市長は声明を発表し、「これは悲劇的な状況。野宿者数の急増を深く悲しんでいる。周知の通り、シドニーは住宅危機にあり、中所得者層でも家賃や住宅ローンの支払いに苦慮している」と述べた。

市の統計によると、2006年以降、市内の家賃の中央値が60%上昇したのに対し、家計所得は48%の上昇にとどまっている。』

私は、7か月半ほどシドニーに住んでいたことがあるので、このニュースが目に留まりました。記事の写真では、薄着で寝てるホームレスが写ってるけど、シドニーは日本と逆でこれから寒くなるところ。日本ほど冷えこまないにしても外で寝るのは辛いと思う…。ちなみにシドニーの都市部ではシェアハウスが一般的で、1つの部屋に2段ベッドが2台、計4人が生活するなんてのも普通のことです。私が住んでいた当時(2012年)、そのような部屋で1週間100~160ドル位が相場でした。1豪ドルが86円前後でしたから、ひと月35,000~55,000円位ですね。私が住んでいたのは、World Square前の都心部でしたが、それを差し引いても高いなと感じたことを覚えています。とは言え、当時は夜でも一部の場所を除いて、そんなにホームレスを見ることは多くなかったのですが、今はどうなんでしょう。昼間から酒場でビールを飲んでいる人がたくさんいる陽気な街で好きなんだけどな~。


今回はここまで☆
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No.10 空き家売却時の譲渡所得税に特別控除 空き家対策が更にお得に♪

No.9に引き続き、空き家に関する話です。前回終盤に少しご案内した、平成28年度税制改正大綱に譲渡所得税の控除が盛り込まれている件です。不動産を売却して譲渡益が生じた場合には譲渡所得税を納めることになりますが、一定の要件を満たすと、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できるというものです。既に閣議決定も受けているため、このまま施行まで進むと思われますが、まだまだ知られていないのではないかということから、先日、参加した空き家110番参加者の間で、今後周知に努めるべきということで話題になったものです。

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前回の記事はこちらからご覧ください。

myjimusyo.hatenablog.com

譲渡所得税における、いわゆる、「居住用財産の3,000万円特別控除」は、その名のとおり居住用(マイホーム)が前提となっていましたが、これを空き家にも適用することになります。(適用期間は、平成28年4月1日~平成31年12月31日。)ただし、空き家であれば何でもいいというものではなく、適用するには一定の要件があります。その要件とは、次の要件を全て満たす空き家及びその敷地の譲渡であることです。

①相続開始まで被相続人の自宅(他に同居者はいなかった。)であり、相続により空き家になった。

②昭和56年5月31日以前に建築された建物である。

③区分所有建物(マンションなど)ではない。

④相続により取得した個人が、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡である。

⑤売却額が1億円を超えない。

⑥相続開始から譲渡時まで、空き家以外になっていない(事業用などにも使われていない)。

⑦譲渡時に、現行の耐震基準に適合している。

⑧行政から要件を満たす証明書等の発行を受け、確定申告書に添付する。

※空き家及び敷地がともに、上記⑥の要件を満たす場合、空き家除却後の敷地の売却に際しても、本特例の対象となります。

詳細は以下リンク先のP.1から(国税)及びP.6から(地方税)をご覧ください。

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「要件が多くてよくわからないな~。」なんて方は、とりあえず、

相続で取得した戸建て住宅を3年以内に売ると、3,000万円控除が使える!

って感じで覚えておいて、「あれ!?うちの空き家に使えるんじゃないか?」と思ったら詳細を検討する位でいいかもしれませんね。本特例の適用には要件が多く、適用される場面は限定されてはいますが、当てはまれば譲渡益から3,000万円の控除をすることができて、効果は大きいものになりますから、今後の空き家対策を考える上で検討を要する事項になりますね。また、上記①の「被相続人の自宅」であるという条件について、住民票上は被相続人の住所が空き家所在地になっていたとしても、実際には施設等に入所していた場合にはどう扱われるのか?といった具体的な取扱いに関しては、今後の運用を見ていくことが必要になるでしょう。

今回は、税金の面からも空き家対策の実施を後押しする制度があることをお伝えしました。最後に少しだけ宣伝をさせていただくと、司法書士MY法務事務所では空き家対策に力を入れて取り組んでおり、他の専門家とも連携しながら費用対効果の高い空き家対策をご提案しています。空き家対策には法務・税務・不動産の専門的知識が必要になります。空き家のことなら是非、司法書士MY法務事務所へお気軽にご相談ください。

と宣伝したところで、今回はここまで☆

司法書士MY法務事務所の空き家対策(空き家問題)のページはこちらからどうぞ。

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No.9 葛飾区の空き家が強制代執行により撤去開始 自ら空き家対策した方が得!!

3月3日、空家対策特別措置法に基づき、葛飾区が強制代執行により空き家(70代女性所有)の撤去作業を開始しました。報道によると、対象となった空き家には30年以上誰も住んでおらず、また、老朽化がひどいため、10年前から所有者の女性に対して改善を求めてきたが、応じなかったとのこと。そのため今年1月に撤去命令を出したが、所有者女性はこれも拒み、今回の代執行に至ったということです。動画や写真を見るとかなりひどく傷んでおり、代執行に至ったのも止むを得ないところでしょう。近隣住民や通行人に大きな被害が出なかったのが幸いといったところです。

報道の内容や老朽化の様子については、リンク先をご覧ください。

www.yomiuri.co.jp

www.news24.jp

空き家については、所有者が高齢者で施設に入ったため誰も住まなくなったとか、相続したものの相続人には別に住居があるため使わないなど発生原因は様々ですが、その数は増加傾向にあり、平成25年の総務省の調査によれば、総住宅数に対する空き家の割合は13.5%となっています。空き家であってもきちんと管理や手入れがなされていればまだ良いのですが、単に放置されているものについては、安全・防犯・衛生・景観などの面で問題が生じることから、政府もこれを放置するわけにはいかず、対策を進めています。その内の1つが、昨年施行された空家対策特別措置法であり、今回の代執行の根拠もこの法律なのです。

空家対策特別措置法の概要については、こちらをご覧ください。簡単にまとめています。

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近年、大きな社会問題となっている空き家の増加ですが、空き家がそのまま放置されている原因の1つとして、「空き家の放置は大きな不利益をもたらす」という認識がない所有者の方が多いというものがあります。もちろん、撤去や活用・管理などの空き家対策をしようとすれば、労力や費用がかかるということもありますが、根底には認識の薄さというのもあると思います。冒頭で「近隣住民や通行人に大きな被害が出なかったのが幸いといったところです。」と書いたのがまさにそれで、ここで空き家所有者の方に伝えたいのは、

空き家は労力や費用を払ってでも対策しなければ、更に大きな不利益や損害を被る可能性がありますよ!!

更に、空き家を放置するのは、いつ爆発するかわからない爆弾を抱えているようなものですよ!!


ということです。労力や費用の支出は誰にとっても嫌なもの。だから後回しにしがちです。しかし、空き家を放置することには次のようなリスクが伴います。

工作物責任の問題(民法第717条1項)
例えば、空き家を放置していたところ、外壁が風で飛ばされ、通行人に当たって怪我をさせたり、死亡させたという場合には、所有者がその責任を負うことになります。今回の代執行の対象となった空き家も瓦や壁が落ちてきていたとのことですから、これが人に当たらなかったのは本当に幸いでした。ちなみに公益財団法人日本住宅総合センターの試算によると、風に飛ばされた外壁が11歳の子供に当たって死亡させた場合、その損害額は5630万円になるという試算もあります。いつ強風が吹くか、誰に当たるかなんて予想ができるわけもなく、また、「こんな強い風が吹くとは思わなかった。」といった言い訳をしても逃れることはできません。この所有者の責任は、過失が無くても責任を負わなければならない(無過失責任)からです。空き家を放置することで多額の賠償金と、人が亡くなる原因を作ったという罪を背負うことになってしまう可能性があるのです。

②火災、竹木その他近隣への被害
総務省のデータによると平成25年の総出火の内、原因の割合は、最も多い「放火」と「放火の疑い」を合計すると18.3%にも上ります。空き家は人の目につきにくく、狙われやすくなります。火災により隣家に延焼した場合でも、故意または重過失がなければ賠償責任を負わないということはよく知られていますが、見舞金等を支払うことは必要になるでしょうし、何より責任を負わないから燃えても良いということにはなりません。更に、手入れをしなければ木の枝葉は隣家に伸びていきますし、ゴミが不法投棄されれば悪臭や害虫の発生を招くことにもなります。そうなれば損害を被った近隣住民から賠償請求をされる恐れも出てきます。

③不動産価値の低下、換価可能性の低下
空き家の放置により、建物の傷みは進み、土地が荒れてしまうと、財産としての不動産の価値は低下し、売却を考えた際に不利益となります。また、荒れた土地や建物は周囲の景観を悪くし、ひどいものになると近隣住民とのトラブルの原因にもなります。また、トラブルそのものによっては賠償請求までは至らない場合でも、売却を考える際には、これに先立つ境界確定(売却の対象敷地がどこからどこまでかを確定する作業)において、普段から関係の良くない隣地所有者が協力してくれないことが大きな障害となる場合があります。

代表的な空き家放置のリスクを挙げてみましたが、いずれも大きな不利益や損害だと思いませんか?このような事態に至ると、空き家対策を施す労力や費用よりも格段に大きなそれがかかることになります。場合によっては他人の生命を脅かす危険さえあるのです。

また、行政代執行の費用は所有者に請求されることになりますが、報道によると今回の費用は185万円です。やり方によっては、同じく撤去するにしてもこれより安い金額でできた可能性もあったんじゃないかとも思います。ちなみに自治体によっては、空き家の撤去について助成金を出してくれるところもあります。撤去を考えている方は、一度助成金の有無を調べてみた方がいいですよ。

それと注意してほしいのは、動画や画像によると、今回の空き家は活用のしようがない位ボロボロでしたが、ここまで傷んでいない空き家でも、行政から「特定空家等」として指定される可能性は十分にあります。(というより、今回の事例は傷みがかなりひどいレベルであり、特定空家等に指定される基準としては、もっと傷みが少ないレベルが想定されています。)

※「特定空家等」とは、次のいずれかにあたる空家等をいうとされています。
①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

「特定空家等」に指定されると、行政代執行の対象となるほか、固定資産税及び都市計画税の軽減特例の対象から外されます。軽減特例の対象から外れると、それまでに比べて固定資産税は6倍、都市計画税は3倍の金額で請求されることになります。ホント、空き家を放置することによってロクな事がないのです(>_<)


でもピンチはチャーンス!!って考えてみると…

放置している空き家を活用しちゃえば、危険どころか利益を生み出すことになります。例えば、まだ傷んでいなければそのままでも、少し痛んでいたとしてもリフォームして賃貸したり売却したり。相続で受け継いだ不動産の相続人が未だ決まっていないなら、この際、相続問題の解決と一緒に空き家問題も解決すれば、効率よく収益を得ることもできるでしょう。つまり、放置したままではマイナスだけど、やり方次第では大きくプラスに転じることもできるということ。今なら政府も空き家問題の解決に積極的になっています。いつか何とかしなければいけないと思いながらも放置したままになっている空き家の所有者さんには、この機会に空き家対策を施すことをおすすめします。

もう1つ、3/5(土)、東京司法書士会及び法務局共催の無料相談会「空き家110番」に参加してきました。ここに集まったメンバーの中で話題になったのが、平成28年度税制改正大綱。ここでも空き家対策の推進につながる改正が話題になりました。政府も何とか空き家問題を解決したいのでしょう。要件を満たせば、譲渡所得税について大きな控除を受けることができることになりそうです。…が、今日は堅い話が長くなってしまったので、その話は次回にします。

更に詳しい空き家対策関連情報は、弊所ホームページ内の「空き家対策(空き家問題)」のページにあります。よかったら覗いてみてくださいね!

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No.8 認知症事故賠償訴訟 「最高裁は家族の賠償責任を認めず」 判決の影響は??

愛知県で認知症男性が電車にはねられ死亡した事故をめぐる裁判で、最高裁が「家族に監督義務があるかどうかは生活の状況などを総合的に考慮すべき」との判断を示し、今回のケースでは、監督義務はなかったとして亡くなった認知症男性の家族の賠償責任を認めないとの判決を下したとの報道。扱いが大きかったので、皆さんもご存知ではないでしょうか?

www3.nhk.or.jp

事故の発生から簡単に説明すると、事の起こりは平成19年、JR共和駅(愛知県)の構内で91歳の認知症男性(要介護4認定)が電車にはねられ死亡しました。これに対してJR東海振替輸送費用などの賠償につき遺族と協議したが合意に至らなかったため、賠償を求める裁判を起こしました。その後、1審(名古屋地裁)では、「目を離さず見守ることを怠った」と男性の妻の責任を認定し、長男についても「事実上の監督者で適切な措置を取らなかった」として2人にJR東海の請求どおり、720万円の賠償責任を認めていました。2審(名古屋高裁)は、「20年以上男性と別居しており、監督者に該当しない」として長男への請求を棄却したものの、妻の責任は1審に続き認定し、359万円の支払いを命じていました。そして今回、最高裁の判断は妻及び長男に賠償責任はないとする判決を下した、という流れです。

さて、私は判決の全文を入手している訳ではないので、報道されている情報によると、次のような判断が示されたようです。

認知症患者の家族だからといって、監督する義務を無条件に負うものではなく、生活の状況などを総合的に考慮して判断すべきである。

認知症の人や精神的な障害がある人について、妻や実の息子だからといって、それだけで無条件で監督義務を負うものではない。同居しているかどうかや、日常的な関わりがどの程度か、財産の管理にどう関与しているか、それに介護の実態などをもとに、家族などが監督義務を負うべきかどうかを考慮すべきである

これを今回の事案に当てはめると、妻は当時85歳で介護が必要な状況(要介護1認定)だったうえ、長男も離れて暮らしており、月に3回程度しか実家を訪ねていなかったことなどから、「認知症の男性を監督することはできなかった」として賠償責任は認められないと判断したということです。

さて、事件の内容の大筋はこういったところですが…

実はこの判決、この家族や他の認知症患者の介護をしている家族だけではなく、介護業界全体にも影響を及ぼし得ると言えます。

そもそも、直接、振替輸送費用が発生する原因となった故認知症患者ではなく、その妻及び長男に対して損害賠償請求がなされた根拠として民法714条があります。簡単に説明すると、「責任無能力者(自己の行為の責任を弁識する能力がない者)による不法行為については、一般的監督義務を果たさなかった監督義務者が、責任無能力者に代わって損害賠償責任を負担する。」という内容です。

例えば、16歳の少年が加害者となったとしましょう。一般的には16歳ともなれば、自己の行為の責任を弁識できますから、この少年は責任無能力者ではありません。ところが通常、16歳の少年に損害賠償責任を果たすだけの資力はありません。しかし、だからといって被害者が泣き寝入りしなければならないというのでは余りに不条理ですし、被害者保護の要請にも反します。そこで、少年の親権者(監督義務者)に賠償責任を認めるということです。

今回の事案では、故認知症患者を責任無能力者とし、その妻及び長男を監督義務者として請求がなされた訳ですが、前述のとおり、「認知症患者の家族だからといって、監督する義務を無条件に負うものではなく、生活の状況などを総合的に考慮して判断すべき」とされました。仮に、「認知症患者の家族には無条件に監督義務あり」とされていたらどうでしょう。遠方に住んでいるため家族の介護ができない人が、「目が届かないときに事件でも起こされたら面倒だから家に閉じ込めておこう。」と考えたり、介護するだけの体力がない人は、「出歩かれたら面倒だからベッドに縛り付けておこう。」と考える、なんてことも起こらないとも限りません。そういう意味では、普段から認知症患者とあまり接触する機会が多くない方は、監督義務を負う可能性が少なくなったという意味ではほっとされるかもしれません。(とは言ってもこのような場合、認知症患者に対する介護が充分になされていないという問題は解決していませんが。)

他方、普段から介護をしている家族や、日常的に多人数の介護をする介護施設等においては、「普段はちゃんと介護をしているのに、一瞬の隙に事件が起こったら多額の損害賠償責任を負うことになるんじゃないのか?」といった不安もよぎるのではないでしょうか。一時期騒がれた悪質な介護施設による認知症患者への虐待(問題を起こさないためにベッドに拘束するなど。)が発生する可能性もあるでしょう。もちろん事件が起こったとしても、短絡的に、「普段から介護している家族(施設)だから責任あり」ということにはならないでしょうが、考えようによっては、「面倒見の良い家族が責任を負い、面倒見の悪い家族は責任を負わない。」ということにもなりかねません。家族も含めて介護人材の不足が叫ばれている近年、このようなリスクがあるとなれば安心して介護をすることもできなくなり、ますます介護人材の確保が難しくなります。

だからといって、被害者保護の要請も無視することはできません。関わって被害に遭っても泣き寝入りしかないのであれば、そもそも最初から関わりたくないと考えるようになってしまいます。そう考えると、やはり根本的な何らかの解決方法を考えなければいけなくなります。記事にも記載がありますが、損害保険の対象拡大も1つの解決策になるかもしれません。認知症患者は将来的に増加が見込まれていますから、この問題についての対策は今後、社会的急務になっていくでしょうね。司法書士の立場としては、例えば成年後見人となった場合に、しっかりと介護できる体制を整える(未然に自己の発生を防ぐ。)といったことが問題解決の一助となるのでしょうか。難しいところです。

今後、同様の事件が発生した場合に、今回示された基準がどのように運用されるのか、具体的にはどの程度まで関わりを持っている者に監督義務ありと判断されるのか、が明らかになっていくでしょう。もちろん、同様の事件が発生しないのが、1番良いのですが…」

それでは今回はここまで。弊所ホームページは随時更新中。よければ覗いてみてくださいね☆

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