千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.30 「節税目的の養子縁組も直ちに無効とはならない」と最高裁が判断

久しぶりの更新となってしまいました。新年1回目は1月中に更新したかったんですが…(> <)さて、昨日のことなんですが、相続税の節税を目的としてなされた養子縁組の有効性が争われた裁判で、「養子縁組の主な目的が節税であっても直ちに無効とはならない」との最高裁の判断が示されました。これまでも相続税対策として養子縁組が使われるケースは多かったのですが、その有効性につき最高裁が追認するようなものとなりました。

具体的な事例は、次の図を見てください。

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まず、被相続人甲の生前に、甲とその孫乙との間で養子縁組がなされました。ところが、一審及び二審判決によると、縁組成立後に甲とその長男Aの関係が悪化したようで、甲の長女及び次女が「養子縁組は無効」として提訴したというものです。

というのも、縁組については、その要件として縁組意思(戸籍の届出をする意思及び社会通念上真に親子と認められるような関係を設定する意思)の合致が要求されているからです。したがって、たとえ届出の意思が合致していたとしても、新に親子関係を築く意思がないときには縁組は無効となります(最判昭23.12.23)。
 
今回のケースは、一審では養子縁組を有効としたものの、二審では、Aが税理士を連れて甲のもとを訪れるなど、度々、甲が節税効果の説明を受けていた経緯等を踏まえ、「(この養子縁組は)相続税対策が目的で、真の親子関係をつくる意思が無かった」として、養子縁組は無効と判断されていました。
 
しかし、1月31日の最高裁の判決では、「節税の目的があるからといって養子縁組の意思がないとは限らず、主な目的が節税でも直ちに無効にならない」との判断が示されました。そのうえで、今回のケースでは、「縁組の意思がないことをうかがわせる事情はない」として養子縁組は有効と判断されたという訳です。この判断から考えるに、今後、縁組が無効となるのは、当事者に全く縁組(親子関係をつくる)意思がない場合などに限られそうで、今後も養子縁組を用いた相続税対策が進むものと思われます。
 
ところで、そもそも養子縁組による相続税対策はどのようなメリットが得られるのでしょうか。主なものを以下に挙げていきます。
 
 相続税基礎控除額が増える
基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数であるため、法定相続人(養子)を増やすことで、基礎控除額を増額できます。ただし、基礎控除額が増える養子の人数は、
・実子がいる場合は1人まで
・実子がいない場合は2人まで
であり、養子を増やせば増やすほど基礎控除額も上がっていくという訳ではありませんので注意が必要です。
 
②死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額が増える
死亡保険金及び死亡退職金については、500万円×法定相続人の数が非課税となるため、法定相続人(養子)を増やすことで、非課税となる額を増額できます。ただし、これにも①と同様の人数制限が適用されるので、やはり注意が必要です。
 
③(相続財産が多額である場合)相続税の総額が少なくなる
少しややこしい話ですが、相続税の計算上、相続税総額の算出時に課税遺産総額を法定相続人に法定相続分割合で割り当て、速算表に沿って各人の相続税額を割り出す作業があります。その合計額が相続税の総額となる訳ですが、速算表は法定相続分に応じる取得金額が増えるほど税率がどんどん上がる超過累進税率が採用されているため、法定相続人(養子)を増やすことで各自の法定相続分割合が減り、より低いランクの税率が適用されるようになります。そしてその結果、相続税の総額が少なくなるのです。ただし、遺産総額によってはあまり効果が出ないケースがありますから事前のシュミレーションをおすすめします。
 
これに対して、主なデメリットとしては、以下のものが考えられます。
 
①配偶者の税額軽減額が少なくなる場合がある
配偶者の相続については、法定相続分または1億6,000万円の内、いずれか多い金額までは相続税がかからないという制度があることはよく知られているところですが、養子縁組をすることで配偶者の法定相続分が減るため、軽減額も少なくなるケースがあるということです。例えば、子がいないために兄弟の子、すなわち甥や姪を養子にするというような場合において、本来であれば配偶者の相続分は3/4、被相続人の兄弟姉妹の相続分が1/4ですが、養子縁組をすることにより配偶者の相続分は1/2、養子の相続分も1/2となります。このように配偶者の税額軽減額が少なくなりますから、多額の財産を配偶者に残したいと考えている場合には、注意が必要です。
 
②遺産分割協議がまとまらなくなる可能性が増える
遺産分割協議は相続人全員でする必要があります。養子も相続人となる訳ですからやはり参加は必要です。人数が増えれば、まとまる話もまとまらなくなる可能性は増加します。
 
③孫を養子とした場合でも、2割加算の対象になる
これは養子縁組した場合のデメリットというより、法定相続人以外の者に遺産を承継させる場合の注意点でもありますが、法定相続人以外の者が相続により財産を取得した場合には、その者の相続税額は2割加算されます。養子も一親等血族であり、子である以上法定相続人となるのですが、相続税の算出の場面では孫を養子とした場合であっても2割加算の対象から外すことはできません。
 
 
いかがですか?養子縁組をするということは、家族が増えるのと同様のことですから、節税面からのみならず、遺産の分配に大きく影響することや、更には今後の家族関係のあり方などを多角的に検討のうえ、慎重に決めるべきです。また、上記のメリット及びデメリットの検討のためにも、事前に専門家に相談し、シュミレーションをすることをおすすめします。
 
それでは今回はここまで。お役立ち情報満載の司法書士MY法務事務所のホームページも是非、ご覧ください。

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