千代田区神田大手町の司法書士が役に立つ話から笑い話まで☆

神田、大手町の司法書士MY法務事務所の代表が日常生活で役に立つ知識から笑える話まで気ままに綴るブログです。肩ひじ張らずに読んでってください♪

No.40 土地相続の登記義務化が検討されています~所有者不明土地の増加を受けて~

今回はタイトルのとおり、土地の相続につき登記が義務化が検討されているという話。法務省が行った調査では、50年以上にわたり何らかの登記がされず、所有者が不明となっている可能性がある土地が中小都市・中山間地域では26.6%、大都市では6.6%に達しているとのこと。この中には空き家が建っているものも多く含まれるとみられていて、問題解決に向けての新たな取組みが始まるといったところですね。

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報道されている内容は下記リンク先よりどうぞ(日経新聞電子版)

www.nikkei.com

所有者不明土地は現在も増加しており、2016年時点で410万ヘクタール、2040年時点で700万ヘクタール(ちなみに北海道本島の面積は約779万ヘクタール)を超えると試算されています。決して広くはない日本においてこれってすごい面積ですよね。

産経ニュースでも、同じ問題が取り上げられています。こちらは、「九州の面積を上回る」と表現されています。まぁとにかく、「多くの土地が所有者不明状態だ!!」ってこと。

こちらの該当ページへは下記リンク先よりどうぞ(産経ニュース)

www.sankei.com

土地を重要な資産と考える日本において、なぜ、所有者不明なんてことになってしまうのか、その一因として、「相続登記がなされず、放置されてきた不動産」という問題があります。

不動産登記における、いわゆる「権利の登記(所有権や抵当権等の権利関係を公示する登記)」をすることは義務ではありません。登記をするかしないかは個々の判断。だけど通常は不動産を取得したら登記をしますよね。マイホームを購入した場合、決済日当日に司法書士が所有権移転や所有権保存、融資を受けての購入なら抵当権設定の登記をするのが一般的です。これは、所有権や抵当権につき、対抗要件(第三者に権利を主張するための要件)を得るためになされています。ほとんどの場合、不動産の売主と買主には個人的な深い関わりはありませんから、所有権が動けば、万が一に備えて所有権移転登記を急ぐのは当然ですし、融資する金融機関と融資を受ける買主の間での抵当権設定も同様に考えられます。

しかし、相続の場面では、「相続人は家族だし、急いで登記しなくても争いにならないだろう」とか、「遺産分割がまとまらない。面倒くさいから、当面そのままにしておこう」といった思惑が働き、相続から何年、何十年も経過しているのに名義人は未だ故人のままということが、そこそこあります。

この場合、役所の側に立ってみても、どんな形での相続がなされたのか(遺言書の有無、遺産分割協議の有無等々)まではわかりませんから、その不動産の所有権を誰が承継したのかわからない、所有者不明だ、となってしまうのです(つまり、全く誰のものか見当もつかないというより、「多分、現在の登記名義人の相続人の内、誰かが所有しているんだろうけどその誰かがわからない」ということ)。

実は前述の、「相続人は家族だし、急いで登記しなくても争いにならないだろう」とか、「遺産分割がまとまらない。面倒くさいから、当面そのままにしておこう」という考え方が所有者不明の不動産増加の一因となっています。

例えば、Aが死亡して相続が生じて、その相続人がB、C、Dである場合に、相続登記をしない内に、Bが死亡して二次相続が生じると、Bの相続人全員が、Bの権利義務を承継し、Aの相続についての遺産分割協議におけるBの権利行使もBの相続人全員でなすことを要します。もし、CやDにも二次相続が開始したとすると、最初の相続の相続人は3名だったのに、二次相続の発生でAの遺産分割協議の参加人数は9名に増えてしまったなんてことも起こり得ます。仮に、同じ増え方をしていったとすると、三次相続が発生した場合には27名です。遺産分割協議がまとまらなくなるのも当然ですよね。

更に話がまとまらなくなる原因として、数回の相続を経たことにより、各相続人間での関係が薄くなっていくという問題もあります。最初の相続では兄弟関係でも二次相続では従兄弟関係、三次相続でははとこ関係。ここに配偶者も絡んでくれば相続人間とはいえ、会ったことも話したこともないというケースもあり、協議をしようとしても話はまとまりにくくなります。

費用の面から見た場合にも、やはり負担が大きくなります。世代をまたぎ、相続人が増えれば、大抵は住んでいるところもバラバラです。国外居住の相続人がいることもありますし、行方不明の相続人がいるなんてこともあります。当然、一同に会することなんてできません。そうなると、相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬や郵送交通費等の実費費用も高くなります。業務内容が多くなり、処理時間が長くなるため仕方のないことです。

…とここまでくるとウンザリしてきませんか?そう、放置することで、いいことなんてないのです。義務化されるまで放置するメリットもないのです。だったら義務化される前に手をつけたほうが良いと思いませんか?そこで、ここまで色々書いてきましたが、大切なことをズバッと言っちゃうと

 

相続が生じたら、なるべく早く司法書士に相談してください!!

 

ってこと。最初の相続の段階で手続きしてしまえば早く、お手頃なお値段で完了しちゃいます。しかも早いです!MY法務事務所でも相続登記のご依頼は多くいただいていますが、一次相続のみだと、大抵さっくり終わります。オススメですよ。

なお、記事には、「土地所有権の放棄」に関しても記述があります。記事を読む限りでは、望んだとしても必ずしも自治体に取得させる制度にはならなさそうですが…。これを利用して、「長期間放置しても権利関係がややこしくなったら、土地所有権を放棄しちゃえば解決」なんて考えもあるかもしれませんが、そう簡単にはいきません。所有権を放棄するにも相続人全員の合意は必要です。多少なりとも持分を有している相続人の権利を、他の相続人が勝手に放棄するなんてことはできませんからね。結局のところ、相続が生じたら早く手続きをしてしまうことが大切なのです。

 

今回はここまで。相続に関する情報は、下記リンクよりMY法務事務所「相続関連業務」のページをご覧ください☆

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